あなたが好き…です。
次の日の朝、アレンは書類を持ってルークのいる執務室を訪れた。
「アレン、チビ王子はどうしている?」
「まだ寝ているみたいだな、トーマスさんがついていたよ」
少し間を置いてから、
「大事になる前に解決しておかければいけない。長引いて国交問題になってきては一大事だ」
「その事なんだけど、あの大臣達と一緒にいた男の事の報告だ。あいつは大臣の領地で占い師をやっているヤバめのヤツらしい」
「ヤバめ…?」
アレンはルークに書類を渡すと、
「占い師って看板掲げているが、呪術に催眠術、詐欺に強盗なんでもありで、逮捕歴もある人物だ」
「逮捕歴…」と、呟いてから、
「アレン凄いな。こんな短時間でよくそこまで調べてくれて…さすがだな感謝だ」
「簡単だ。あの屋敷に勤めている元カノに聞いたんだ」
「カノジョいたんだ…」
ノックの音と一緒にプリシラが入って来た。
「おはようございます。何か進展しましたか?」
「残念だけど、今のところ何もないよ」
ルークの笑顔のあとにアレンは、
「プリシラ姫、チビ王子には会ってきたの?」
「うーん。いや、その1人で会いに行くのは…ちょっと、その…」
顔を曇らせてモジモジしながら言うプリシラに、ルークが優しく言った。
「じゃあ、みんなで行こう」
「ルーク、俺はチビ王子を見たら用事に出るよ」
2人は頷きあった。
ニルスは客室のベッドで眠っていて、トーマスが横で心配そうに座っていた。
3人が入って来たのに気づくと立ち上がり、
「皆さま、おはようございます…」
「挨拶に来るのが遅れて申し訳なかった。ニルス殿の容態は?」
「ルーク王子、こちらこそご迷惑をおかけして…」
ニルスの瞼が勢い開いた。
「ルーク王子…。ルーク王子、ルーク王子」
呆気に取られる全員。
ニルスは鳥が大空に飛び立つように素早く飛び起きると、獲物を穫るように勢いよくルークの首にしがみ付き、床へと引きずり倒した。
多分、思い切り首を絞めている。
呆然の全員。
アレンとトーマスが慌てて引き離そうとしても離れない。
ルークを離さないニルス。
「クソ。このガキなんて力なんだ!」
叫ぶアレンと狼狽えるトーマスと、苦しそうなルーク。
「ニルス様。おやめ下さい…」
顔を歪ませるルークを見て、我に返ったプリシラが4人の側に行くと、叫んだ。
「ニルス様!」
振り向いたニルスをプリシラは思い切り引っ叩き、怒鳴った。
「何やっているんですか?いい加減にして下さい、国際問題ですよ。そんなニルス様は私、大嫌いです」
叩かれただけではない赤が、ニルスの顔の全部を染めた。