あなたが好き…です。
プリシラは続けた。
「それから…気になる事があって…。大臣と一緒にいた男の事なんだけど…」
「知り合い…?」
アレンの言葉にプリシラは首を振ってから、
「知らない人のはず…です。だけど…」
ルークも思案顔で頷いてから、
「見たことのない顔だった。あの場にいたから、大臣と知り合いなんだろう…けど。プリシラは…一体、何が気になるの?」
プリシラは少し考えてから、
「なんだろう…?匂いと…いうか、私の感覚というか…」
と、ブツブツ言いながら考え込んでしまった。
「プリシラ、とにかく帰ろう。ここにいて大臣が出て来ても困る」
「そうだよ、プリシラ姫。大臣が走って追いかけて来るよ~」
ルークの言葉に追加してアレンが茶化す。プリシラは、自分を含めたこの3人のホンワカとした関係が大好きになっていた。
「はい。ルーク王子とアレン伯爵様」
ブツブツ言っていたニルスが顔を上げた。
「ルーク…王子。ルーク王子」
大声で突然に叫び始める。
怒鳴り声に、ルーク、アレン、プリシラが振り返った。
振り返ったルークに向かって、自分の護身用のナイフをかざしてニルスが走って来る。
無表情のニルスと銀色に光るナイフ。
驚きで叫ぶ間もないプリシラと、静かに見ているルーク。
ニルスの振り上げたナイフはあと少しでルークに突き刺さる。
咄嗟にプリシラは顔を覆った。
ルークに、ナイフが突き刺ささった。
…はずだった。
ドスン、ドタンとおかしな音に、プリシラは両手で覆った指の隙間を広げ両目を開けた。
プリシラが見たのは、アレンに羽交い締めにされて暴れているニルスと、ナイフを拾っているルークだった。
「ルーク刺されたの?大丈夫なの?アレンはケガはないの?」
ルークは微笑んで、
「あぁ、大丈夫だ。俺には最高のSPがいるからね。見事な足蹴りだったよ」
「お褒めにあずかり光栄です。…で、ルーク捕獲したチビ王子どうする?」
ニルスはジタバタ暴れながら、
「ルーク王子、ルーク王子」
と繰り返すだけだった。
「いつも変だけど…もっと変よね」
「プリシラ姫…、それは可哀想だよ」
「プリシラ、エプロン脱いで」
ルークの発言に赤くなって動揺するプリシラと、ニヤニヤするアレンに、
「おまえたち勘違いだ。チビ王子が暴れないように縛って行くんだよ。まさか、大臣に頼む訳いかないだろう」
「なるほど」とエプロンドレスをルークに渡すとうまい具合にニルスを縛り、馬車の中に押し込んだ。
ニルスはトーマスとアレンの馬車で、プリシラとルークが同じ馬車で帰路についた。
「ニルスをどうするの?」
プリシラが訪ねるとルークは、
「チビ王子の症状が変すぎただろう?アレンの親父が宮廷医師をやっているから診せてみようと思って…」
「そうなの?」
「取り憑かれているのか、持病なのか…あのままでは国に帰せないから」
頷くプリシラ。
(持病…なんて…あったかな?)
それよりも、何か引っかかる。
言い知れない嫌~な胡散臭さに、胡散臭さレーダーがピクピク反応している。