あなたが好き…で
占いなんて、女や子供の遊びだろう。タヌキ大臣は僕をバカにしている。
そう思って、適当にあしらおうとしていた。
「実はですね、アローゼ国でも彼らの占いを広めたいと思っていまして。そのためにもニルス王子にご紹介がてら、何か占って頂いてみては?と思った次第なんです。どうでしょうか?」
微笑むオズワルド大臣。
ニルスは引きつりながら、
(占いなんて、街でみんな勝手にやっているじゃないか、それをわざわざ許可取りするなんて…何かあるな。面白そうだな…)
「そういう…事なら…」
「安心いたしました。紹介いたします…」
ドアが開いて部屋に入ってきたのは、背の高いフードを被った男だった。
夕方のガーランド城。
私室でルークは、ニルスからの報告書を読んでいた。
好奇心いっぱいで見つめるプリシラと、腕組みで見守るアレン。
「チビ王子は、なんて書いてきたんだ?」
「ルーク様?なんて書いてあるんですか?」
ルークは2人をチラリと見てから、
「明日は晩餐に招待された。と、どうやら気に入られたみたいだ…。と書いてある…」
「心配していたのに、なんて呑気なの…」
アレンは皮肉いっぱいに「本当に…?」と言って笑ってから、
「それだけ…なのか?」
「いや。追伸に、やたらに妙な占いを勧めてくる。女、子供じゃないんだぞ!って書いてあるな…チビ王子は子供…だよな…」
3人ともに「うーん」となった。
アレンは呆れながら、
「とにかく、王位継承権持ち王子に変な占い勧めたらダメでしょ」
「そんな事されたら…非常に困る。何考えているんだ?」
首をかしげるルーク。
「どんな占いなのかしら?」
興味津々なプリシラ。
「プリシラ姫~ダメっすよ。面白がっていたら…」
「アレンさんこそ…顔笑ってますよ~」
ルークは真面目な顔で、
「こら!おまえたち…好奇心丸出しじゃないか。チビ王子がかわいそうだろう?」
「ルーク、俺は真面目に国を思ってだな…」
「アレン、笑いながら言っても説得力ないぞ。とにかく、興味深いな…」
ホテルに戻ったニルスは、オズワルド邸での事を思い出そうとした。
だけど、男を紹介されて握手をしたあたりからの記憶が曖昧だった。
確かに挨拶はした。
…握手をした。
だけど、その後の事が…、遠い日の夢のようで、切り取られた断片が宙を舞っているようにフワフワと記憶の底に落ちていく感じだった。
気がついたら馬車に乗り帰路についていて、翌日の晩餐の予定も決まっていた。
トーマスに聞いたら、普通に挨拶をして翌日の予定も会話の流れで決めていたと言っていた。
ルーク王子に馬車を借りた手前、報告書を書いているけど、書きようのない不安を表現する方法がない。
プリシラの事があるから弱みは見せたくない。