あなたが好き…で
邸に到着したニルスを出迎えたオズワルド大臣は、3台の王家の馬車に驚いた。
「驚きました。王家の馬車でお越しとは…、お知らせ下されば、こちらで送迎の馬車をご用意いたしましたのに…」
ニルスは笑いながら、
「ルーク王子の大いなるはからいだ。貴殿の気にする事ではないだろう」
オズワルド大臣は小さく首を下げた。
ニルスが案内された部屋は、大きな窓から午後の陽射しが降り注ぐ…これぞ金持ちという豪華な部屋だった。
大臣を待つ間、ニルスはそっとトーマスに耳打ちした。
「金持ってます。感が凄いな」
「ニルス様?聞こえたら国際問題ですよ。何があっても微笑んでいて下さい」
「わかっている」
ややあって、にこやかに部屋に入ってきたオズワルド大臣としばらくの間、にこやかにありきたりの会話が進んでいった。
(こいつを疑う事もなかったのか…?)
と、ニルスは気を許しかけた。
それを見透かしたように、オズワルド大臣は真顔になってから、
「ニルス王子は、エドモンド卿の姫君をご存じでしょうか?」
「わが国のエドモンド卿ですか?プリシラ姫が何か?」
だいたいは察しがつく。
昨日、トーマスがオズワルド大臣の事を細かく調べてきてくれた。
オズワルド大臣は自身の一族の悪政を隠し繁栄させるため、自分の娘ソフィアをルーク王子の嫁にしたがっている。
堂々と…かなりあくどい事もしている…と。
「プリシラ姫がどうと言う事ではないのです。ルーク王子と私の娘ソフィアとの事です…」
オズワルド大臣は誰の事を責めるでもない口調で、ソフィア姫とルーク王子が婚約間近だったのにプリシラ姫が現れてから、婚約の話が進まなくなった。と、嘆いて見せた。
そして、
「お伺いした話では、ニルス王子とプリシラ姫は婚約されていたとか?」
(…そういう…事か…)
ニルスは少しためらった振りをしてから、
「残念ながら、プリシラ姫とは婚約はしていません。ですので、…協力はできかねます」
「いえいえ。協力という事ではなく、頭の片隅にでも置いて頂ければと思いまして」
(はっ!よく言うよ。本当は邪魔だからプリシラを連れて帰ってほしかったんだろう?タヌキ親父め…)
ニルスはニコリと笑って、
「わかりました、心がけましょう。では、これで…」
立ち上がったニルスに、
「ニルス王子。今日は紹介したい者がおりまして、今待たせております。私の領地で占いをしている者で、良く当たると評判なんです。どうですか?観てもらっては?」
トーマスが身構える。
「占い…?」
「はい」
オズワルド大臣が微笑む。