あなたが好き…で…
翌日の午後、ニルスの泊まるホテルの前には王家の馬車が3台停車していた。
ニルスは窓から馬車を見下ろしながら、
「トーマス見ろ、王家の送迎付きだぞ。ルーク王子も黒大臣が嫌いらしいな…ふふふ」
「笑い事じゃありませんよ。行きますよ」
「はーい」
ニルスは、トーマスの後ろを軽快に小走りで付いて行った。
ガーランド城の光り溢れる中庭で、プリシラとルークはベンチに座り、人魚の持つ壺から流れる噴水を見ていた。
プリシラの横顔を見つめるルークが、静かに話しを始める。
「プリシラ…今日、ニルス王子がオズワルド大臣の屋敷に誘われて行っている」
プリシラの瞳が大きく見開いた。
ルークは、猫みたい目だな。…と、不謹慎にも思ってしまった。
「それって…どういう事なんですか?」
(ちょっとまって…。今、何て言った?いつの間にあの人達そんなに仲良くなった?)
ルークが優しく、
「詳しくは…ニルス王子が帰って来てからだけど…。思うに大臣は、ニルス王子に何らかの利用価値を見つけたんだろうな」
薄い雲が太陽の前を横切るように、プリシラの瞳が曇った。
「…利用価値…」
(利用されれば、ガーランドの…ううん、ルーク様の足を掬われかねない。どうすればいい?)
「プリシラ、そんな顔しないで。ニルス王子は絶対(不本意だけど…)に守るから」
ルークを見つめるプリシラ…。
(そう…だね。ルーク様)
プリシラはルークの言葉に対して、信頼の微笑みを返した。
「お願いします…」