あなたが好き…で
ルークは執務室で、使者の運んできたニルスからの手紙を読んでいた。
アレンはそんなルークを見ながら、
「チビ王子は、なんて言ってきたんだ?」
「明日、オズワルド大臣の家にお呼ばれするから…」
ルークは少し間をあけた。
アレンはじれったそうに手紙をのぞき込み、
「ん?お呼ばれする…から?続きは…なんて書いてきたんだ?」
「ホテルに帰れなかったら、何かあったという事だから捜索頼む…と書いてあるな」
「それ…マズくないか?」
「非常に困る…な。大臣達が表立って何かするとは思わないが、念のための護衛の兵士と送迎の馬車を3台を出そう」
「3台…?」
「道中も守る。チビ王子の乗る馬車と、それを前後から囲む用に…合計3台出す。何かあって争いになったら…困るのは両国の国民だ」
(いや違う…。チビ王子に何かあったらプリシラは生きていけないほどに責任を感じてしまうだろう…。そんな事に絶対させない。不本意だが…チビ王子を守る)
「よし。すぐに手配してくる」
急いで部屋を出ようとするアレンにルークは微笑みながら、
「頼む。両国間に不要な争いは避けたい」
アレンもニコリと笑って、
「…わかった。プリシラ姫のために…だな」
そう言って、部屋を出て行った。
執務室から庭を見るルーク。
(チビ王子には悪いが、オズワルド大臣が何かシッポを出してくれれば…)
私、プリシラ・エドモンド17才。
…今朝は、ガーランド城の牧場で子ヤギと一緒にアヒルの散歩を見学中です。
ルーク様がお忙しいみたいで、そう若干?えーと、まぁ放置状態です。
…まぁまぁ、家に帰りたい。気分ですよ…。
「姫様。ルーク王子は忙しいんですか?」
声かけてくれるのは、退役軍人で…自称お庭番の、城内牧場の園長のハンスさんと、ヤギ達だけだわ。
「そうみたいなの。急なお仕事が入ったから、ハンスさんのところで少し待っていてって言われて…」
「あはは、それは光栄ですね。いつまでも遊んで行って下さい」
風が吹き抜ける緑の牧場。
池で遊ぶアヒルと、ケンカの練習をする子ヤギと世間話中の大人のヤギ達。
風が気持ちいいね。
…。