あなたが好き…で
ニルスは買い物から戻り、ホテルの部屋でプリシラへのプレゼントの小さな小箱を眺めていた。
この小箱を含め、渡せないでいるプレゼントは部屋ひとつ分にはなる。
プリシラと出会った頃に、気を引くためにプレゼントを贈り続けていたら、国費の無駄遣いはやめてと言われて贈れなくなった。
だけど、贈る事のできないプレゼントは色々な記念事に増えていく。
…自然にため息が出てしまう。
静かなノックの音とともに、トーマスが招待状を持って来た。
「招待状?誰からなんだ?」
「オズワルド大臣様からのお茶のご招待です。どうなさいますか?」
「オズワルド…?それは…誰だ?」
トーマスは招待状を渡しながら、
「ガーランド国で大臣をされている侯爵様です。よくない噂だらけの…、体から腹黒さがダダ漏れされている方ですよ」
「ふぅん?そんなのが…なぜ僕に招待状を?」
トーマスはお茶を淹れながら、
「どこからか…、ニルス様の事が耳に入ったのでしょうね。アローゼ国の王子様がお忍びで来ていると。…ああいう方たちは私利私欲に繋がる匂いには敏感ですからね」
「相変わらず…辛辣だな」
トーマスは微笑みながら、
「そうでなければ…ニルス様のお世話はできませんよ。街で買ったケーキもどうぞ」
「ありがとう…」
僕はもう、大人の男だ。
そして、ケーキは女性と子供の食べ物と思っている。
だけど、甘党の大人の男もいるので…これは~それで、全て良しとして食べるんだ。
「で、ニルス様。お返事はどうなさいますか?」
ニルスは招待状を見ながら、
「うーん。日にちは明日の午後と書いてあるな…」
「急ですね…」
「うん、急だな。即決で決めろ。という事なんだろう…、子供だからどうにでもなると小バカにしているんだろうな」
ニルスは招待状をケーキ皿の横に置き、
「返事を出す。喜んで伺うと…」
「よろしいので?」
「うん。ヒマだからな…乗り込んで行ってやる。それから手紙を書くから届けてくれ」
「手紙ですか?どちらへ?プリシラ様ですか?」
ニルスはニヤリと笑った。
「プリシラじゃない。ルーク王子のところだ」
「…、…果たし状…ですか?」
ニルスは手紙を書きながら、
「違う。そんな物出してみろ戦争になるわ。第一に、あちらは正当な後継者で僕はなんとな~く、そんな感じかな?の王位後継者だ。相手にもされないだろう?これは保険だ」
トーマスは手紙を受け取った。