あなたが好き…
ニルスは多少待たされた後で、貴賓室でガーランド国王と謁見していた。
政治的な挨拶が済んだあとで、ガーランド王は滞在理由を聞いてみたくなって、
「ニルス王子は、なぜ長期滞在を?」
貴賓室の隣の控えの室ではルークとプリシラが、壁に当てたコップ越しに聞き耳をたてていた。
「プリシラ…、アローゼ国では本当にこうして情報収集しているの?」
「ルーク様?この方法は、古来から伝わる世界中で使われている超科学ですよ」
「ふぅぅ…ん?」
だけど、ガーランド城の壁が厚いのか、超科学が廃れてきたのか、よく聞こえなかった。
貴賓室では、ニルスが少しためらってから、
「このガーランド国に滞在中のエドモンド家のプリシラ姫に会いたいからです」
ガーランド王は、「ほう?」と言ってから、
「1度お会いしましたが、とても可愛いらしい姫君でしたが…、お知り合いでしたか?」
「知り合いというより…は…」
貴賓室入り口のドアに移動したルークとプリシラは、ドアにコップを当て真剣に聞いている。
「知り合い…ではなく、妻にと望んでいる女性です」
ガーランド王は興味本位で、
「かなり、年上…なのでは?」
「確かに、今僕の見た目は子供です。だけど5年経てば気にならなくなる問題です」
ドヤ顔のニルスと、困惑顔のガーランド王。
ドア前の2人。
「ルーク様、聞こえた?」
「ルーク!様はなし!全然聞こえなかった。あとで父上に聞いてみよう」
2人はドア前を離れて行った。
ニルスはガーランド城の帰りに城を見上げながら、トーマスに呟いた。
「トーマス、僕はオカシイのだろうか?プリシラの事を言うと、大人達は皆一応に怪訝な顔をしたり、愛想笑いで場を誤魔化す…」
「ニルス様…」
「僕は…ただ、プリシラと一緒にいたいだけなのに…」
「ニルス様…。夕食前に街に買い物に行ってみませんか?気晴らしになりますよ」
「そう…だな」
ニルスはトーマスの方を向き頷いた。
トーマスからは逆光で、ニルスの潤んだ目は見えなかった。