あなたが好き…
明るい廊下のはずなのに、恐れる物は何もないはずなのに…。
背筋をピリピリと静電気が走った。
突然の胡散臭センサーの発電!
女の第六感!
(誰?どこ?)
見回して見ても、広く静かな大理石の廊下が、…ただ…広がるだけだった。
(気のせい…?)
総毛立つ感覚と肌伝う冷や汗。
(気のせいなんかじゃない…悪寒がする)
「殺気!」
私の体を包むベールのようなセンサーが悪意を感じている…。
(…)
廊下に、ちょっと足を踏ん張ってから。
(そうよ!考えているよりも!自ら危険に突っ込んで行くよりも!守護者のところへ行こう!)
プリシラはルークの執務室を静かに訪れた。
時計は10時前、約束より5分くらい早かった。
気を利かせて、アレンが微笑みながら執務室を出て行く。
「早すぎた…かしら?」
「ん?大丈夫だよ」
ルークは優しく微笑む。
不思議だった…。
さっきの悪寒がスルスルと消えていく。
ルークと執務室で飲むお茶は、周りにある書類や本棚の資料とかで中々の圧だった。
「今日の午後3時に、チビ王子が父上に謁見に来る事は聞いている?」
(驚…もしかして、これが悪寒の原因か?)
「聞いてないです…。(会いたくないから)あれから連絡も取ってなくて…(会いたくないし)」
「俺も朝、聞いたばかりで…、何とも言えないけど。プリシラは挨拶に行きたい?」
思いきり何度も頭を振った。
「会いたくありません。ルーク…は、挨拶に行くのですか?」
「いや、今のところその予定はないよ…。ただ、プリシラが行くなら付いて行くけど…?」
「いいえ…」
(ニルスは、あの事がなければ凄くいい子だと思う。思うんだけど…、無理。顔も見たくない)
午後2時半。
ガーランド城の門を、ニルスの乗る馬車がゆっくりと入って行った。