逢いたくて…。
ルーク様の両手が優しく私の両頬を包み込む。そして、静かに言った。
「断っていて良かった。しかし、自国の王子からのプロポーズを家族揃って断るなんて…凄いよ」
私はドヤ顔で、
「当然です。私は子守りのためにお嫁入りするつもりはありませんし、我が一族の機嫌を損ねればアローゼ国は潰れますから。それに、時がくれば…そう、ニルス様にも本当に…好きな人が現れると思いますし…」
ルーク様が微笑む。
「ニルス様…にも?」
私の頬が赤く、赤く染まる。
「意地悪言わないで下さい…」
「うん…。わかった…」
…気のせいじゃないよね?
ルーク様の潤んだ目と、私を包む両の手が熱を帯びている…。
爆裂を繰り返す私の心臓の音…。
「プリシラは…俺の側にいろ。どこにも行くな…俺が必ず守る」
「ルーク…」
心の奥の何かが言葉になりかけた…と、
その時に、ドアが静かにノックされて、
「ルーク、いいか?もう帰る時間だ」
ルーク様の頭がガクリと下に下がって、
「ア…レン…」
変な緊張が吹っ切れて、思い切り照れ笑いをした。
ルーク様も苦笑いしている。
エドモンド邸からの帰りの馬車の中、ルークはふて腐れていた。
「アレンは間が悪い…」
「仕方ないだろう、時間なんだから…。もしかして?もしかして?いい感じになっていたのか!それは、それは失礼した!良かったじゃないか!あはは~は!」
「アレン…」
笑っていたアレンは真顔になって、話を切り出した。
「ルークを待っている間に、使用人達に聞いた話だが、チビ王子は上2人を追い越して王位継承者になっているらしい」
「なんだ…それは?」
「…偉くならなきゃ、プリシラと結婚できないと言って頑張っているみたいだ…。そして、周りも家族もそれを認めている。ルーク、手強いライバルだな」
もの凄いため息がルークからこぼれた。
「ライバルは手強い方が燃えるだろう?」
またアレンはニヤリと言った。
「他人事だと思って…」
「はい」
アレンはプリシラ登場で、ここまで喜怒哀楽を見せるルークが可愛くて、面白くて仕方ないでいた。
「けどね、常に俺はルーク王子の味方だから。何かあったら言えよ」
ルークは静かに微笑んだ。