逢いたくて…。
「さぁ、プリシラ一緒にアローゼ国に帰ろう。聞けば、この屋敷に強盗が入って、その強盗は逃走しているそうじゃないか。そんな危険な国にいる事はない。一緒に帰ろう」
(ニルス様、それは…ルーク様にケンカ売ってますよ)
トーマスがコホンと咳払いをしてから、
「ニルス様、そろそろホテルに帰る時間です。家庭教師の先生がお待ちです」
(もしかしたら、私達を見かねて助け船を出してくれた?)
「せっかくプリシラに逢えたんだ。時間をずらそう」
「ダメです。国王陛下と、ガーランド国へ行っても定時間にお勉強するとお約束でしたよね?」
「あぁ…仕方ないな…。プリシラ…じゃあ、夕食後にまた来るよ。そうだ、僕はそのままここに泊まる。客室はあるだろう?」
これにお母様が条件反射して、
「ニルス様、我が家は泥棒が気安く入るような警備の緩~い屋敷でございます。とてもじゃありませんが、ニルス様にお泊まり頂ける環境ではございませんわ」
「しかし、番犬がいたぞ。それに兵士もいたが…」
兄様も真剣な表情で、
「あれは、保護施設から引き取った老犬ですよ。甘ったれで人間大好きなペット達です。兵士は、仮装させたエドモンド家の使用人ですよ…物騒ですからね。みんなに頑張ってもらっているんです。ニルス様にお泊まり頂いて、もしも…不測の事態になったとしても、エドモンド家では責任を取る事ができません」
「それなら、プリシラだって危険じゃないか。なら、プリシラが僕と一緒にホテルに行こう。あそこの警備は万全だ」
(あぁ…、いや、えぇーと…)
隣のルーク様は、まだ肩震わせて笑っているし、どうすれば…。
「大丈夫ですよ、ニルス様。プリシラは私の部屋で一緒に休んでいます。この、私が命をかけて守っています」
(兄…何故、そんな嘘を言うんだ?)
ドヤ顔の兄、笑いが止まるルーク様。
まん丸目になったニルス様は、
「そ…、それは、一緒のベッドで寝ているという事なのか?」
「いいえ。さすがにそこは、大人の兄妹でございます。残念ながら…ベッドは別です」
(兄…、残念そうに言うな…)
「とにかく、ニルス様。帰りましょう」
促すトーマス。
「しかし…」
ごねるニルス。
「ニルス様。アローゼ国の王子様となれば来賓待遇のはず、恥ずかしながら話を聞いていませんでした。このままでは外交問題になります。ホテルは引き上げて頂いて、城においで頂きます。歓迎いたします」
突然に営業スマイルのルーク様。
ニルスは、むくれながら
「ホテルに帰るぞ、トーマス。プリシラ、また明日来るから待っていて」
「相変わらずだな…チビ王子」
「困ったわね。まさか、こっちにまで来るなんて…」
ため息の母と兄。
ソファに深々座り込む私…。