逢いたくて…。
激しく吠える犬達。
犬達の喧騒で、光りがユラユラ揺らぎ風が葉を大きく揺らしている。
大きな赤い薔薇の木陰から、10才くらいの身なりのいい男の子と、父親らしき男が姿を現した。
「おはよう。プリシラ…」
男の子は何事もないかのように、高揚した笑顔でこちらに向かって歩いてくる。
ルークは、武器を持っていなかった事を後悔した。
(親子?違うな、従者と貴族の子供か…)
プリシラは、ルークの後ろにコソコソと完全に隠れている。
「プリシラ…どうしたんだよ?僕だよ。ニルスだよ」
子供が叫ぶ。
ルークは後ろを振り返りながら、
「プリシラ…知り合いなのか?」
「えっ!いえ…その…」
兄ジュリンと母親シェリルが走って来た。
「ニルス様。こちらでしたか?探しましたよ」
「僕は少しでも早く恋人のプリシラに会いたかったんだ。プリシラは恥ずかしくて隠れているみたいだけど」
「恋人…」と、言いながらルークがプリシラを見た。
プリシラはプルプルと首を振った。
ニルスはルークに視線を移すと、
「僕の愛しいプリシラ?その男は何者なのだ!何故そんなにくっついているんだ。もしかして、騙されているんじゃないのか?僕のプリシラから離れろ」
「僕のプリシラ…」
ルークが復唱して、プリシラがルークを横目で見た。
従者の男が慌てて、
「ニルス様、お言葉が過ぎますよ。それに、ご挨拶もしないで…」
「僕は、アローゼ国の第三王子のニルスだ。それと、僕の従者のトーマスだ」
トーマスはペコリと頭を下げた。
ルークは少し微笑んでから、
「初めてお目にかかります。私はガーランド国の第一王子ルークと申します。貴国のエドモンド卿及び、プリシラ姫には懇意にさせて頂いております」
ニルスとトーマスの顔色が変わったのがわかった。
母シェリルが心配そうに、
「とにかく皆様、お話しならお茶を飲みながらにしましょう。ね?」
母と兄の後をニルス達が歩き、最後をプリシラの手を引くルークが歩いて行く。
「どういう仲なの?」ルーク。
「仲というほどの事は…」プリシラ。
「安心した…」
「はい…」
(…)