バケーション。
AM : 06:00
警察署の朝の見回りで、牢の扉は開き、足枷は外され、トーマスはいなくっていた。
お城からの使者の後に、警察の偉い人がわざわざ邸に来て説明してくれた。
偉い人が来るなんて…、外交問題になるのが怖いのだろうなと思う。
一緒に聞いていたお母様は静かに、だけど怒ってるよね?の口調で、
「足枷の鍵が外されていた。という事は、誰かが牢を開けて足枷を外してあげて、『どうぞ、お逃げ下さい』って逃がしたって事になりますわよね?」
兄様も真面目な顔で、
「警察内に手引きした人間がいるって事ですか?」
「面目ございません。内通者がいたかどうかは調査中ですし、犯人に関しては全力で追っております。お屋敷の警備も充分な人数の手配致しましたのでご安心下さい」
私達は顔を見合わせた。
「それと、申し上げにくいのですが、旅券の名前は偽名でした。その事を現在、オズワルド大臣に確認中でございます」
(…犯人トーマス【仮】は、オズワルド大臣【ソフィア姫の父】の領地出身…)
「まぁ、旅券偽造だなんて…そんな恐ろしい事をするなんて」
お母様が目を伏せる。
「では、急ぎますので失礼致します」
この会話を最後にお偉いさんは大急ぎで帰って行った。
馬車を見送るウエラや、他の使用人達も不安そうにしている。
「姫様、怖いですわね」
「大丈夫よ。仕返しに来るとは決まってないし、もし襲って来ても、あなたたちは必ず私が守るから」
ドヤ顔の私。
「いえ、姫様は深窓の令嬢ごっこをしていて下さい。決して単独行動しないで下さいよ」
(ウエラ…相変わらず…ひどいわ)
邸内全員のテンションMAXの1日は、無事に何事もなく終わった。
夜は、兄様が私の部屋で最初から眠るのを許した。
さすがに怖かったから…。
そして、何事もなく朝を迎えた。が、
…朝から、家の者達の目が厳しい。
みんな私を監視している…。
もしかして、みんな私が犯人捜しに街まで繰り出して行くとか考えているんじゃ…?
「ワァ-」と叫びたいモヤモヤを、犬達と裏庭でモンモンとくすぶらせていたら、
「プリシラ…」
「ルーク…様?」
聞き覚えのある優しい声と微笑み。
ルーク様の余りの神々しさに、嬉し恥ずかしで、照れながらモジモジしてしまっていると、犬達が私より先にシッポを振り振り駆けていき飛びついていた。
「呼び捨ての約束のはずです」
「はぁ…」