バケーション。
「やはり、ソフィア姫の仕返しなのでしょうか?」
唐突にジュリアンが口を開いたのは、
犯人の顔を見たいというルークの申し出に、署長が様子を見に席を外した時だった。
ルークは、さすがに兄妹。はっきりと物を言うのは似ているなと思いながら、
「お茶会で何かあったのですか?」
誰からも詳しくは聞いていない。オズワルド邸に行ったのだ、何かない方がおかしい。
アレンも興味深そうに見ている。
「プリシラは、ルーク様に会うな。と言われたと言っていました。憶測ですが、今回の事は、見せしめ的な嫌がらせだった…のではないかと思っています。まぁ、本当に盗み目的だったにしても…どっちにしろ、可愛い妹に危害を加えようとした事は万死に値します」
心の中で頷くルーク。
戻って来た署長に、地下牢に案内された3人は、鉄格子越しに男の顔を見つめた。
署長が説明する。
「旅券の名前はトーマス.ウィルスです。身元は、今調べています」
ボサボサの髪に痩せこけた頬、年代は3人よりだいぶ上に見える。
足かせをつけられ、舌を噛まないための猿ぐつわもつけられていた。
「こんな顔だったのか…」
呟くジュリアンに、アレンは、
「捕まえた時には顔は見なかったんですか?」
「暗かったし、それどころではなかったですから、プリシラが心配で…」
(…犯人を叩きのめしていたかもしれない)
「もう、よろしいですか?」
来た時と同じように戻って行く4人を、男は牢の中から上目遣いにジッと見つめていた。