バケーション。
「…で、どうするの?これ」
寄り添う私と母様とウエラ。
私達を守るように立っているみんな。
その私達の足元には、後ろ手に縛られて、顔から血を流したヤクザ風の男が座り、兄様が男のこめかみに銃を押し当ている。
「泥棒か?それとも我が邸への恨みなのか?」
俯いたままの男。
こめかみに銃口がグイグイと食い込んでいって、間違えて引き金が引かれれば…、私の部屋が!お気に入りの家具が!こんな奴の脳みそと血ヘドで汚れるじゃないのよ…。
もう1度聞いた…。
「兄様…。この男どうするの?」
「もうすぐ警察が来る。来たら引き渡す。どうせ俺達が聞いても口は割らないだろう」
(まあ…ね。同感)
お母様も頷きながら、
「プリシラ、今回は無事だったかったから良かったけど…次回からは逃げなさいよ」
(…次回もあるのは…決定なんですか?)
私達とは1度も目を合わせずに、男はやっと来た警察に連行されて行った。
夜明けまでは、まだ時間がある。
この邸から泥棒がいなくなって、安心したのか急に眠くなってきた。
あくびする私に兄様は、
「プリシラは客間で寝た方がいい。この部屋で寝るのは危険だ」
確かに、ガラスが飛び散っていて物理的にも危険だし、精神的にもダメージがある。
今ごろになって両方の膝が震えてくる。
私が狙われたのか、偶然入った部屋に私がいたのか…。
考えれば考えるほど怖くなってきた。兄様の言うとおり、今は警察の取り調べの答えを待つしか方法がない。
とりあえず、疲れた。眠い。寝なきゃ。
家族のあとについて歩き、冷たい風が吹き抜ける部屋のドアを…静かに閉じた。