バケーション。
次はガラスを傷つける音。
(この音は…、ガラス工房で何度も聞いた…)
そして、ガラスを外す音…。
次には、窓の鍵が動く音。
カーテンの奥から…、少し冷たい空気が漏れてくる。
私は、ゆっくりと静かに、ベッドから滑り出る。
(どう…すればいい?)
助けを呼びに行くには…時間がない。
武器になる物も…ないな…。
どうしようもないから、燭台を下ろしてサイドテーブルを持ち上げた。
(小さいテーブルで助かった…)
息を殺して、分厚いカーテンに近づく…。
心臓が連打していて、口から飛び出そうなくらいになっている。
(落ちつけ。落ち着くのよ…)
いつもは静かに開く窓が、大きな音を出して開いた…気がした。
冷たい風と一緒に、カーテンが人型に左右に動く。
私は、テーブルを持ち上げ、人型を思い切り殴りつける。
(夜中に、女の子の部屋に来るな!!)
ガツンとぶつけたテーブルから、両手に嫌な鈍痛が伝わってくる。
「ウギャー」か、「ウワァー」か、よく覚えていないけれど、人型が高い叫び声をあげる。
(男の声だ…)
人型が倒れて割った窓のガラスも、高い音を出して砕け散った。
多分…邸中に響き渡ったった。
頭を抱えて座り込む人型を、もう一度殴ろうとテーブルを持ち上げた。
…ところに、
「プリシラ!」
と、叫びながら部屋のドアが弾かれる。
灯りを持って現れた兄様が生き神様に見えた。
そして、バタバタと現れる母様や、ウエラ達。
助かった…。
私、1人じゃない。…って、感動!