お茶会
私と兄様の乗った馬車はオズワルド邸に到着した。
「さぁ、可愛い妹よ。決戦だ」
「お兄様…。お手柔らかに」
とは言っても、初めての国、初めてのお茶会招待に1人で来るのは…絶対に嫌だった。
なぜなら、匂う…。
胡散臭さ臭が…。
お茶会は庭で開催されていて、私達の他の招待客がすでに何人か集まっていた。
「いらっしゃいませプリシラ様。とお兄様」
声をかけてきたのはソフィア姫だった。
「ご招待頂きましてありがとうございます。兄のジュリアンです」
兄様も微笑みながらお辞儀をして、
「ジュリアンです。私の参加も許して頂き感謝申し上げます」
(いつもの兄様と違う…怖)
「まぁ、ジュリアン様。わたくしもお会いできてとても光栄ですわ。こちらへどうぞ。皆様にご紹介致しますわ」
招待客達が何人か集まっている所へ案内されると、
「皆様、初めてのお客様をご紹介致しますわ。アローゼ国のジュリアン・エドモンド様と妹のプリシラ様ですわ」
「わたくし、少し所用がありますので失礼致しますね」
そう言って、私と兄様の挨拶を見たあと、ソフィア姫は場を離れて行った。
他のお客達の顔が好奇心でいっぱいになってきて、
「まぁ、ご兄妹で?留学か何かですの?」
そう聞く気の良さそうなおば様や、
派手なドレスの奥様には、
「あら?わたくし、アローゼ国って初めて聞きましたわ」
(あらあら?もう少し国際情勢のお勉強された方が…ね?)
「私も知りませんでしたわ」
「ねえぇ、それはどこにありますの?」
「知りませんわ」
と、他の小娘達も薄ら笑いをしてきて、腹の出たタヌキ親父は、
「確か…我が国が小麦を買っている国では?」
「まぁ、小麦ですの?」
大げさに小娘が叫ぶ。
(…小麦の輸出…止めてやろうか)
…この人達の挑発には絶対にのらない。
兄様が、呆れた顔のあとに、
「小麦だけではないですよ。豆にお茶に花も買って頂いています。確かガーランド国の農産物の輸入割合の4割程がアローゼです。ありがたいお客様です…ね。プリシラ…」
「えぇ、それに皆様の大好きな宝石も採れますし、毎年、大聖堂には沢山の方に観光に来て頂いています。…感謝してますわ」
兄様は微笑みながら、
「紳士淑女の皆様に、我が国の宝石はとてもお似合いになります。特に美しいご婦人にはお似合いですよ」
微笑みながら周囲のご婦人達を見回すと、みんな兄様に見とれて、ため息をついている…。
出た…。
兄様の癖が。
観衆に讃えられていたい…主役病が。