初見4
そう…だよね。
差し出した手を引こうとしたら…、
「…はい」
小さな声が聞こえてきた。
苺姫の隣に座っていたおばちゃんが目を大きくして
「シーラ…」
「大丈夫よ…ね」
「ね」で…、こっち見た。
控えめに言っても可愛い。
僕たちはめくるめく踊りの渦に飲まれていた。
(シーラ。シーラ)
名前はシーラ。と心の中で何度も唱えている。シーラは僕の目を見て微笑んでくれた。
光と音と歓声がみんなを回りながら夜空に昇っていく。
夢のように心が回っていく。
微笑む苺姫の重みを繋いだ両手で感じる。
夢なんかじゃないんだ。
あの後、どうやって帰って来たのかよく思い出せないけれど、自分のベッドの上で朝になっていた。
思い出しては、自然にニヤけてしまう。
「これは、恋する人間にありがちな思い込みではなくて、苺姫は確かに自分を嫌ってはいないんだ。だから、買い物客以上の段階にもっていかなければならない。判る?」
朝食を食べながら、俺はアレンに説明した。
顔色の悪い、二日酔いらしいアレンは水だけ飲みながら、
「つまり、今日も街に出ると…?」
「そういう事だから、あとはよろしく頼む」
「頭…痛いわ」
「寝てていいよ」
今日もいい天気だ。
だから、急いで城を飛び出したんだ。