バケーション。
ルークは目の前のプリシラを見ながら、
本当は2日も…いや、もしかしたら3日も会えなくなる事が寂しくて怖いのは…自分だ。
魂が抜けそうな気持ちだ。と、大声でプリシラに言いたかった。
小さい頃から大人達の中で育ち、成長してからは他国や臣下達の虚栄心と足の引き合いの中で生きてきた。
お世辞や色目で、取り巻いてくる女達にもウンザリしているところだった。
そんな時に、目の前に苺の天使が舞い降りて来た。
…あの時の歓喜と感動は死んでも忘れられない。
プリシラから目を離さず見つめるルーク。「あの?私、何か変ですか?」
「いいえ…」
微笑むルーク。
(緊張するから、見るのやめて…)
心の中で懇願する私。
馬車を降りてから最初に美術館、その後は街をのんびりとお散歩。
私の隣を歩くルーク様。
…の後ろで、一般市民になりきっている護衛の人達。
ウエラ達と歩くのも楽しかったけど、こういうのも楽しい。
そして、見上げるルーク様の横顔が綺麗すぎて、心臓がドキドキと苦しくなってくる。
不思議な、言いようのない初めての…胸が苦しい感覚…。
初夏の眩しい風が、街路樹に光の粉をかけて吹き抜けて行く。
カフェテラスでお茶を飲み、ショーウインドーを覗きながら歩く。
ガラス越しに見るルーク様は、いつも私を見ながら微笑んでいて…、
そのガラスには、私の顔が赤くなっているのも映っている…。
ちょっと動けば触れてしまう距離。
自分の体が自分の物じゃないみたい。
まるで、フワフワと浮かぶ雲の上にいるみたい…。
…!
雲の上から、アローゼ国を思い出して、真っ逆さまに自分の中に着地した。
フワフワじゃなくて、ちょっと待て…私。
…きっと、これは、王都による王都のための王子様マジックに違いないわ…。
私達親子には、この国との交易(支援)という大切な任務がある。
それにルーク様も、田舎娘が珍しいだけなんだし、好き(好き?)になっちゃダメ。
あぁ、ほら…、またルーク様が私をもの珍しがって笑っているわ。
さぁ、自分を取り戻すのよ。プリシラ!
さっきから、隣で歩くプリシラが1人で百面相をしているので、ルークは面白すぎて声をかけずに見ている事にした。