バケーション
土曜日の朝が来た。
ルーク様とお芝居鑑賞の日。
輝く太陽に目まいがしそうだ。
ウエラは朝から自分の事みたいにソワソワしていて、見ているこちらがハラハラしてしまう事が何回かあった。
「ウエラ、ちょっと落ち着こうよ。」
「姫様、何言っているんですか。年齢と家柄の見合った方の玉の輿に乗れるか、どうかなんですよ。気合い入りますよ」
(はい。はい。そうですね…)
現在17才の私。
未だに明確な相手ナシ。
うちの家柄からいえば、「あそこの姫様は、どうしたのでしょうね」のレベルだ。
(だから、なんだ!)…なんだけどね。
「ウエラ、ルーク様との事は期待しないでね。私、余生は静かにひっそりこっそり暮らすって決めているの」
「はい。はい。姫様、お顔は洗いましたか?お迎えが来ちゃいますよ」
「わかったわよ」
時間通りの11時になると、ルーク様の乗った馬車が玄関前に横付けされた。…のを、私は部屋から見下ろしていた。
(うわぁ-、緊張してきた…)
「姫様。ルーク様がお待ちですよ」
「はい」
ウエラのニコニコした顔を見ると、ますます緊張するし、胸の鼓動やばいしで、足が床から浮いている感じがする。
勢いをつけて応接室の扉を開けると、ソファに座るルーク様と目があう…。
ルークは思った。
扉を開けて入ってきたプリシラ姫は、控えめに言っても可愛い過ぎる。
臣下や敵に見下されないため、小さな時から顔に表情が出ないように訓練してきた。
それなのに、そんな訓練も吹き飛んだ。
鏡を見なくても自分の頬が赤らみ、微笑んでいるのが分かる。
「ルーク様?」
プリシラ姫が不思議そうな顔をしてるから、顔を平静に戻して、
「行きましょうか?」