被ってる猫が重い…7
花火が終わると、大人の皆様方はお酒を片手にお話しの輪に花が咲いている。
ルーク様も先ほど呼び出しがかかって、大人の輪の中で難しそうな話(多分)をしている。
ルーク様は、こうやって見ていると立派に王子様なんだな…。
と、ボンヤリしていると、
「プリシラ姫、1人?」
「アレン様…」
「お菓子食べる?持って来ようか?」
ちょうど小腹が空いてきていたので、
「私も行きます…」
「じゃあ、一緒に行こうね」
来客達と立ち話しているルークの視線は、アレンとプリシラ姫を見ていて、2人が歩き始めると、また来客達の話しの輪の中に視線を戻した。
「アレン様…。ルーク様って、どういう方なのですか?」
フルーツタルトを食べながら聞いてみた。
「うん?俺に聞くより自分の目で見て感じた方がいいよ」
「…ですよね?」
そうだよね。
…教えてくれるわけないよね。
「ただ、ひとつ言える事はね、プリシラ姫の事が大好きだって事かな」
ニッコリ顔のアレン様。
頬が赤くなる私。
(あぁ、そうです…か…)
話しを終えたルーク様が戻って来た後、3人で少し話しをした。
ルーク様とアレン様は本当に仲がいいんだと思った。男の友情っていいんだなって。
「プリシラ、帰るよ」
私を呼びに来たお父様にルーク様が、
「エドモンド卿、宜しくお願いします」
と、頭を下げた。
「こちらこそ…」
と、お父様。
(何…?何かな…??)
「お父様、ルーク様に何をお願いされたんですか?」
帰りの馬車の中、私が言いたい事は山のようにあったけど、とりあえずそれは横に置いておいて。
さっき、お父様がルーク様に「宜しく」された事が気になって気になって、今お父様の胸ぐらを摑む勢いで詰め寄っている。
普段から冷静なお父様。今も冷静に、
「ルーク様は、プリシラにも話す。と言っていたが…、聞いてないのか?」
「聞き…ました」
自分の席に座り直した。
「同じ内容だと思うが…な?」
お父様に説明する手間が省けた…。
「私は、どうすればいいのでしょうか?」
「1ヶ月あるんだ。ゆっくり考えればいい」
「はい…」
「ルーク様は無理強いはしたくないと仰った。私もそう思う」
「はい…」
「それに、プリシラは…アローゼにいると色々とあるし、王都で1ヶ月の間、ルーク様達と一緒に遊ぶくらいの感じでいいと思うよ。羽を伸ばしておいで。ただし、気楽過ぎて不敬罪な事はしないようにしないと…」
微笑むお父様。
少しふくれる私。
「しませんよ。そんな事は…」
星と月だけが残った夜のベランダで、アレンとルークは何も見えない遠くを見ながら、
「ルーク。プリシラ姫は、帰したのか?」
「帰りましたよ」
「てっきり、城に泊めるかと思っていた」
ルークはもっと遠くを見ながら、
「嫌われたくないから…な」
「さっきも、プリシラ姫が淋しそうだから側にいてくれ。だしな…」
「あれは…、だな。1人にしておいて何かあったら大変(特に来客のオヤジ達)だし、俺は接客で抜けられないからだろう」
「ですよね。はいはい」
そうなんだ…。あの時、プリシラ姫を狙うように客のオヤジ達がニヤニヤしていたんだ。
だからアレンに頼んだ。
プリシラ姫の側にいてくれと。
俺の…大事なお姫様だから、
俺が行くまで守ってくれって。