被ってる猫が重い…6
ドンパン、ドンパンと上がる花火が、…私の心臓の音に聞こえてくる。
ドキドキが止まらない。
(盗み読みしたお母様の恋愛小説みたいだわ…)
あれ…?…ちょっと待って。
「ルーク様、どうして私と結婚なんて考えたのですか?」
そうだよ、私。
そこだよ、私。
「一目惚れです。二度と逢えないと諦めていて…でも、巡り逢えました。これは、神が与えてくれた奇跡なんです。本当は、今すぐにでも結婚したいくらいに、貴女の事が…、プリシラ姫の事が大好きです。ですが、自分の気持ちを無理に押しつけたりしませんから、気軽に友達から始めませんか?」
微笑むルーク様。
(あぁ、ルーク様。それは、神様じゃないですよ。貴方の若気の至りというやつですよ)
花火を観ながら、自分の気持ちも舞い上がってしまい、告白してプロポーズしてしまったけれど、プリシラ姫の表情が固いのが気にかかる。(無理もないけど…)
本当は、どこにも行かせない。このまま城に閉じ込めて置きたい。
…なんて言えないしな。
「あのぅ…、ソフィア様は…?」
不安げにプリシラ姫が聞いてきた。
…ソフィア?
あぁ、ソフィア様の事か。
「彼女が何か?」
「ソフィア様がトイレの前で、ルーク様と自分は恋人同士だと教えて下さいましたよ」
…そんな事…。
「彼女は…、多分ね、何か思い違いをしていると思いますよ。俺だけを信じて下さい」
「思い…違い…ですか?」
「はい。彼女には何の感情も持っていません…。貴女だけです」
…プリシラ姫が、もの凄く…胡散臭そうな顔をしている…。
今は、まだ…、それでもいい。
まだスタートしたばかりだから。
隣に座るプリシラ姫の手を握りたいけど…、嫌われたくないからワイングラスを持っていよう。
ルーク様がさっきからワインを飲んでいる。この告白ってさ、酔っぱらいの戯れ言って事ないよね?朝、起きたら「あれ?なんだっけ」みたいな…。
…あっ、目があった。
笑っておくか。
プリシラ姫が俺を見ている…。
幸せな夜だ。