被ってる猫が重い…3
「プリシラ姫…」
「はい?」
ルーク様の目線が…モジモジと、私の顔の周りを泳いでいる。
「あのぅ…?」
ルーク様は下を向いて、こちらに向き直ってから、
「プリシラ姫は…今、好きな人はいますか?」
「はっ?いいえ…」
(なんだ、この展開は?…面倒くさい事になりそうな気配が漂ってきた…気がする)
「あぁ、良かった…」
「はぁ…」
ほっとしたように笑顔になったルーク王子見てたら、なんだか胸の奥がキュンとしたけど、反射的に愛想笑いが口元に張り付いた。
午後の透明な風が優しくバラの香りを運んできている。
お茶会もお開きになったらしく、庭園越しに帰る人が見えてきた。
そろそろかな?と、
「では、ルーク様。失礼致します」
って、立ち上がったら、
ルーク様が迷子の子犬のような表情で、
「木曜日、お待ちしています」
(…花火か…)
「私も楽しみにしておりますわ。では、これで失礼致します」
微笑み合う私(営業スマイル)とルーク様。
私を探していたお父様に無事に合流した後、私達も家路についた。
ルークは帰るプリシラ達を見送りながら、思っていた。
エドモンド卿に聞いた時、プリシラには恋人らしき存在はいないと言っていた。
だけど、片思いの相手はいるかもしれない。親にはそんな事言わないだろう。だから、今日、直接聞いてみた。
プリシラ姫は真っ直ぐにこちらを見ながら、迷いもなく「いない」と言った。
いや、直接「いない」とは、言わなかったけれど、「いいえ」と、確かに「いいえ」と言ったんだ。
自室でボンヤリしているルークにアレンが声をかけた。
「ルーク…、なんだか顔がニヤけているぞ」
「そんな事は…、そうなのか?」
ルークは、思わず顔をおさえた。
「嘘だよ。プリシラ姫と上手く進展あったのか?頑張れよ」
「ありがとう」