猫被り姫と幸福な王子5
ルークはソフィア姫からプリシラを奪い、凱旋して来た騎士のような気分で壁際のソファに案内した。
とにかく、誰にも邪魔されずにプリシラ姫との時間を大切にしたかったし、聞きたい事があった…。
「ソフィア様とお話が弾んでいられましたね?楽しいお話しでもされたのですか?」
ソフィア姫の父親は大臣として権威を振るっているが、いい話しは聞こえてこない…。
ソフィア姫も似たようなものだ。そのソフィア姫が初対面のプリシラ姫に打算なく接するはずがない…。
もしかしたら、トイレであったのも偶然ではないかもしれない。
「月曜日にソフィア様のお宅に誘って頂きました。けど、それはお断りしました。私達、火曜日に国に帰るんです。帰国の準備もありますからね。あとは、私とルーク様が何曲も踊ったので誤解されていたみたいなんです」
(ん?誤解?なんだ?いやちょっと待って…。帰国?火曜日?今日は金曜日だぞ…)
1回…冷静になろう…。
「のど渇きましたね?何か飲みましょう」
カウンターから持って来た自分用のワインと、プリシラ姫にはジュースを渡して、
「さっきの話しの続きですけど、ソフィア様が誤解をしていたんですか?」
「そうですよ。ルーク様とソフィア様が恋人だからってお聞きしましたよ…。私だって、ソフィア様の立場だったら凄く嫌ですよ」
(…そこで意気投合しないでくれ…)
プリシラ姫と会う前に飲んでいた酒が残っていたのか、ダンスが悪かったのか、プリシラ姫に酔っているのか、酔いが回る。
とにかく…、酔ってもいられない。
近くの柱の陰にいたアレンに目配せして、
「プリシラ姫。少し用ができたので戻って来るまでアレンとここに居てもらえますか?」
「え?あっ…はぁ…」
ルークと入れ替わりにアレンがソファの横にやって来た。
「ルーク様はお忙しそうですね?私、お父様のところに戻りましょうか?」
「ここにいた方がいいよ」
「どうしてですか?」
「ホールの中を見てごらん。豪華な衣装を着た魔物達が足を引っ張りあっているだろ」
「…」
「ここでルークを待っていようね」