猫被り姫
国王陛下は微笑みながら、
「んっ?なんだ?お前たち知り合っていたのか?」
と言いながら、私には、
「プリシラ姫、息子のルークと親友のアレンです。今後とも宜しく頼みますよ」
(…苺を沢山買ってくれるなら…ね)
「陛下、わたくしのような者にもったいないお言葉ですわ。微力ながら両国の友好の証になれるようにと思っております」
ルークは軽く会釈した。
アレンは、「アレンだよ、宜しくね」
ルークは今、軽い金縛り状態だった。
苺姫が微笑んでいる。
こっちを見ながら微笑んでいる。
目の前にいる懐かしい苺姫は…プリシラという名前で、アローゼ国のエドモンド卿の姫君で、国賓でここにいて…、今、自分の目の前で笑ってる。
状況も現状も、原因も現象も全部どうでもいい。
もう逢えない。と、98%諦めていた苺姫が目の前にいる。
…今…、俺の目の前にいるんだ。
幻でも、幽霊でもない。
「良かったじゃないか」
小声でアレンが囁いた。
その声で頭のスイッチが入った。
「実は、美味しい苺のお礼をしたいと思っていたところだったので、今日この場で会えて光栄です。丁度、あちらに貴国の苺を使ったデザートが何種類かあります。ご一緒にいかがですか?」
(デザート…?)
プリシラは、ルークにキラキラ光る王子スマイルで、デザートという女子なら100%ノックアウトの言葉を使われて、…迷うわけにもいかない。
絶対的保護者の父親は、陛下やこの国の重臣達(多分?)と何か楽しそうに話をしている。
アレンもニコニコしている。
なんだかお腹も空いてきてるし、女は度胸だよね!
「ご案内、宜しくお願い致します」
3人は仲良くホールの奥に進む。
ルークを呼び止めようとする姫君達にアレンが立ちはだかり、2人を先に行かせた。
「アレンさんは行かないのですか?」
気になってルークに聞いてみた。
「大丈夫です。後から来ますよ」
(…、プリシラ姫はアレンのことが気になるのか?…ちょっと問題だな)