猫被り姫
大きな門をくぐり抜けて、良く手入れされた庭の中を馬車で走った。
正面玄関に着いて、私が見たのは、どれだけお金をかけたの?って、聞きたいくらい大きな宮殿だった。
「お父様、さすが国が大きいと税金も多いみたいですね。とても贅沢なお城ですわ」
「私の可愛いお姫様。お願いだから…人前ではそんな事は言ってはいけないよ。今日の私達にはアローゼの農産物を宣伝する。という使命がある事を忘れないでおくれ」
お父様がにっこりと微笑むので、
私も「ええ、存じていましてよ?お父様」と微笑んだ。
ダダ広いエントランスホールを抜けて、豪華なドアを開けてもらい、大広間に入った。
そこは、想像以上に絢爛豪華な広間で、集まっている人達も凄かった。(衣装が)
キョロキョロと目が泳いでいるうちに、お父様に遅れてしまう。
着慣れないドレス、履き慣れないヒールなんだから気を遣ってほしい。と、脳内で愚痴っていると、お父様が誰かと挨拶を始めている。急いで後ろについた。
お父様が挨拶しているのは、ガーランドの国王夫妻らしい…。
お父様がこちらを向く。
「さあ、プリシラ、前に…」
言われて、三歩前へ…?
「初めまして…」
あれ…?
「あら?」
国王夫妻の横にいるあの人達って…。
見たことある…あっ!
謎の上客達もポカンとしている。
「お知り合いだったのか?」
お父様が心配そうに聞いてきた。
「お話ししたでしょう?苺をたくさん買って下さったお客様よ」
お父様に、『例の上客よ』と小声で言ったら睨まれた。
すぐに、向き直って、
「お買い上げありがとうございました」
お父様は、上客達にとても丁寧に挨拶している。…この2人…偉いんだ?