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出逢い8

 苺店でお仕事 4日目の最後の時間。


「シーラ」

 それは、私が子供の時の呼び名。

 ウエラ、私はもう大人だよ。

 

 苺店での最後の日くらい楽しませてよ。

 なーんてね。

 

 …クルクル廻るよ。

 大人も子供もクルクル踊るよ。

 楽しい音楽に合わせて踊るよ。

 宵闇の空に、歓声も熱気も想いも吸い込まれていく。

 1番に昇る星に祝福されて微笑むお客様。

 リードする腕が力強い。

 苦手だったダンスが、この人に体を任せているだけで、私までトップスターの踊り子になれそうな気になる。


「ダンスお上手なんですね?」

 お客様は優しく微笑んで答えてくれた。

「姫君にお褒め頂き光栄です」

「姫君に見えたなら光栄ですわ」

 お客様。…うわべだけの会話ならお任せ下さい。

 

 踊っている間、お客様は一生懸命に何かを話しかけてくれているけれど…、

 よく聞こえない。…ふりをした。

 今日だけ、今だけの関係だから…、何も知り合わない方がいい。


 …音楽が廻る。

 みんなも廻る。

 …私達は、時間を忘れて何曲も踊った。

 煌めく星空に浮かぶ銀の月。

 今を…見守ってくれて…ありがとう。


 踊り疲れて…、お客様にさよならの挨拶をして、ウエラにくどくどと怒られながら帰宅した。

 ベッドに入っても眠れない。


 この気分が、大人たちが話していた一晩だけの恋の味なのね。

 …、…私のとは…ちょっと違うか。


 翌日は遅めに起きた。

 …疲れきっていて、起きられなかった。

 とにかく、体が痛い。足が重い。手が上がらない。だるい。病気みたい。と、訴えたところで大人たちが聞いてくれるわけもなく。

 朝食後から、夜会のための美顔マッサージや髪のお手入れに、ドレス選びとウエラが忙しく走り回っていた。

 …私は…、ウエラにされるがままだった。


「ウエラ…、適当でいいよ。どうせ私はお父様の付属品で行くんだから」

「何を言っているんですか。私は姫様をいつも以上に最高に仕上げて、姫様の名を世に知らしめたいんです」

(あぁウエラ…、何故そんなに力が入るの?)


 ウエラはため息まじりに、

「どなたか、…いい人が見つかるといいのですけれど…」

(やっぱり、それか…)


「私は、そういうのは…いいよ」

「何を言っているんですか。お姉様のエミリア様はプリシラ様の年齢でご婚約されていたんですよ。頑張らなくてはいけません」

「人は人よ、ウエラ。上を見てもキリないでしょう?」

「はい、はい。今日はこの白銀色のドレスにいたしましょう。姫様のスミレ色の瞳に良く映えますからね。楽しみですね」

 聞こえていないのか、いや、聞こえているな…。

 ウエラ…私はね、苺模様が好き。と、言いたかった。


 夜になって、ウエラに着付けられた私はお父様と2人で馬車に乗り込んだ。


 いざ、決戦の地へ。



 

 

 


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