表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/115

出逢い7

 苺店でお仕事 4日目。


 透き通るような青空に、賑わう広場。

 もう、お昼が近いのに謎のお客様のご来店がありません。いつもは早い時間にいらっしゃるのに…。


「今日はお見えになるのが、遅いですね。何かあったんでしょうか」

 ウエラが問いかけてきた。

「昨日、2回もいらっしゃったから…、今日は来ないのかも。それに、毎日いらっしゃる方が…変よね?」

「そうなんですか?お寂しいですね」

(今…何故?私が寂しいと思った?)

 ウエラ、気を回しすぎだよ。


 お昼も過ぎて行き…。

(来ない…) 

 お昼休憩に行っている時間が生き地獄のようだった。もし、私がいない間に来店していてモーリス達ちゃんと応対できてる?とか思うと…、ご飯が美味しくない。

 美味しそうに食べているウエラがうらやましい。

「食べないと、あとでお腹空きますよ。あのお客様は、きっと、今日は午後からのご来店なんですよ。急いで戻りましょうね」

 優しいウエラ。

(あぁ…何故、あのお客様に結び付けたがる?)

 

 お昼休憩が終わって…、

 お店に戻っても…来てなかった。

 店番に戻っても…買いに来ない。

 

 私がお店でお仕事できるのは今日が最後になる。昨日、お父様がこちらに到着されて、「明日は王宮の夜会にプリシラも出席だから準備を怠らないように。と、もうひとつ、来週の帰国の準備も忘れないように」と、デカい釘を撃ち込んできた。

 (夜会なんか、面倒臭くて行きたくないわ)


 お母様が来れば、私は夜会なんか行かなくてよかったのに…。

 何が、「アローゼに残る息子が心配で…」よ。息子、20才オーバーだから。何の心配もいらない年だから。なんなら、親はうるさい年頃だから。面倒臭がらずにこっちに来てよね。王都に1人寂しくいる年頃の娘は心配じゃないの。私、凄くかわいそう…。


 ブチブチと家族の事を悩みながら、行き交う人達を見ている。

 みんな自分の人生を一生懸命に生きていて、私だけがこの広場で1人ぼっちみたい。

 午後の青い空に、心が溶けそう…。


「姫様。忙しいから、眠いなら帰って寝て下さい」

 ウエラに怒られた。

 …黙想もできやしない。


 苺の売れ行きは凄く良くて、夕方近くには売り切れていた。時間も時間なので、補充はしないでいる。

 紅い風に誘われて、空が紫を帯びてきて、ガス灯に灯が灯り始めた。夕焼けの中、広場の中央に楽団が演奏の準備を始めている。

「姫様、私達も帰りましょうか?」

「そうね…」


 …名残惜しかった。

 初めての街での、初めてのお仕事。

 初めて知った…名残惜しいと思う気持ち。


 楽団とは逆に、私達は店の後片付けを始めた。

「あら?姫様…。いらっしゃいましたよ」

 ウエラの言葉に振り向く。

 謎のお客様が息を切らせて立っていた。立っているけど、売れる苺が…ない。


「ごめんなさい。苺は売り切れてしまって…」

 私の言葉に謎のお客様は、優雅に手を出して、

「一緒に踊って下さい」って。

 ウエラが目を丸くしているのがわかる。モーリスやロックの目つきが変わり、衛兵達はカマやナイフを持った。

 だけど、心配かけてみんなごめんね。

 ガーランドでの思い出作りたいから。


「はい」

 と、応えて2人で踊りの輪の中に吸い込まれた…。


 


 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ