出逢い6
…不思議。
…朝来て帰って行った。と…思っていた。
…謎の若者が友達を連れて、またご来店してくれています。
人混みの中に、この2人を見つけた時は、心臓がアップしてダウンしてアップです。
つまり謎のお客様の姿が見えて、心臓が「えっ!」ドキンでアップです。
次に、「また来たの?」という気持ちでダウンで、笑顔が見えて…、嬉しくて。
(嬉しくて…?)
心臓が、わけのわからない高揚感でアップして、今は胸がドキドキしてきています。
(ドキドキ…?)
「あら、あの方…」
ウエラも気付いた…。
「苺足りなかったんでしょうか?」
「どうなのかしら…」
私達が2人を怪しんでいると、友達らしき人が店を覗きに来て、
「やぁ、お嬢さん。売れ行きはどうですか?」
とても気の良さそうな…、初対面でも高感度が上位クラスの人です。
「ありがとうございます。とても順調です」
(後ろにいる謎のお友達のおかげです)
お客様の顔を見たら、つい、
「いつもお世話になってます。今日はどうなさいますか?」と、聞いて…シマった。
「今日も…全部です」
普通に応えられました。
あーあ、謎のお客様。あなたのお友達も驚いていますよ。まぁ、ですが、売り上げが大事なので、気が変わらないうちにと苺を台車に載せました。
何か言いたげなお客様。
言いたい事が…探せない私。
沈黙が口を閉ざす。
時間切れを感じてなのか、台車を押し帰って行った…謎のお客様。
「姫様…?」
ウエラが心配そうに声をかけてくる。
「だめですよ。一般の人を好きになったら、姫様は公爵家ですよ。つり合いませんよ」
「えっ、ウエラ。何言っているの、誤解よ…」
「そう…ですか?もっとも、私は姫様の味方ですよ。かけ落ちするならお手伝いしますよ」
「もぉ-。バカ言ってないでよ。どこの誰かも知らない人なのよ」
照れる私にウエラは微笑んでくれた。
その後も適当にお客様をさばき、1日の仕事を終えて帰宅した。
食事を終えて自室に戻ると、月明かりが部屋を照らし出していた。
昼のウエラの言葉を思い出すと、胸が締め付けられるみたいにチクチク熱い。
好きな人と結婚とか…そんな未来、私に得られるはずはないもの。
胸が…、いや全身だけど、体も心もチクチク痛むよね、…私。