出逢い5
苺店でお仕事 3日目
今日も来てます。
…謎の若者が…。
はっきり言って、謎過ぎて怖くなってきたよ…。私の周りを固める農夫見習い達もピリピリと警戒し始めている(多分?)のが彼らの視線でわかる。
「あの、今日も全部お買い上げですか?」
聞いてしまった。
(どんなに大家族でも、大量の苺X3日分だよ。いくらなんでも家族怒るでしょう…?)
「全部です。あの、変…かな?」
真面目に返された…。
(あっ!もしかして、ライバル店の嫌がらせか?在庫が切れて商売できなくしてやれ。…とか、なんとか…)
「変とかではないですけど、…毎日沢山買って…頂いているので…その、生ものなので食べ切れないのではと…心配になって」
(腐らせて棄てるなら…か・う・な)
「全部美味しく頂いています。安心して下さい」
(いくら調子のいいこと言われても…うーん)
「苺下さい…」
ワゴンの下から声がした。
…?
見てみると、母親と小さな女の子が立っていて、女の子は硬貨を両手に差し出している。
「ごめんなさい。苺はこのお兄さんがね…」
(全部買い占めた…)
「はい。どうぞ」
(…?)
謎の若者はワゴンの上から2籠を取り、母子に渡した。母親は、
「あっ、1籠でいいんです。1籠分しか…」
母親にその先を言わせないように、
「これは、俺からのプレゼントだからお金はいりませんよ」
(おっ?)
そして、女の子には、
「新鮮なうちに食べないと、あの苺のお姉さんに怒られちゃうよ。早く家に帰ろうね」
(おおぉ…)
「ありがとう。お兄さん」
母子は何回もお礼を言って帰って行った。
(ありがとう…よくやった。謎の若者)
苺の全額を支払い台車に苺を載せると、
「あっ、あの…」
と、何か言いたげだった。
めちゃくちゃ言いたげだったけれど、言わずに帰って行った。
謎の若者の後ろ姿を見送りながらウエラは、
「いい人でしたね」
「疑って悪かったかな…」と、私。
「疑っていたんですか?あの人は疑われていた事は知らないからいいんじゃないですか」
なんだろう?
この幸福感は…?