あなたが好き
襲いかかってくる大臣側の見張り達を倒しながら、ルークは考えていた。
どれくらいの時間を工場の中で戦っているのだろうか。多分、1時間とか2時間とか、そんなものかも知れない。
暴れるだけ暴れた後に残ったものは、灯りが消え、嵐が過ぎ去ったような様子の工場だった。
捕まえた見張り達は壁際にまとめて縛られ、動いたり暴言を吐けばアレンに殴られている。
隠れた人がいないのかと、何度も探し歩いた工場内には、救助されるべき人間はもう残っていなかった。
荒れ果てた工場の中で、ルークは味方の兵達を見回していた。自分も含め、カスリ傷はあっても騎士達は誰も大きなケガひとつしていない事が誇らしく感じた。
後は、工場の中の麻薬の証拠を集めて…。
と、思っていた。
働かされていた人達を外へと出そうとしていると、外にいた警備兵の1人が慌てて走り込んで来る。そして、ルークに駆け寄ると、そっと耳打ちした。
ルークの形相が瞬時に悪魔のごとく変化する。
側にいたアレンが心配そうに聞いた「ルーク、どうしたんだ?」
「いや、大臣が現れたんだが…、プリシラの事で俺を呼んでいる…」
アレンが不思議そうな顔になった。
大臣が来るのは織り込み済みで、というか来るように仕向けておいた。
証拠を突き付け、言い訳できないようにするつもりだった。
…が。
アレンは、捕まえてある敵団子を立たせながら、
「ルーク、ここは任せろ。行って来い」
に「後は頼む」と言い残すと、工場の外へと全力で走って行った。