あなたが好き
時間は、朝にさかのぼる。
目的地である工場前に着いたルークは、プリシラを置いて来た事に凄く後ろ髪を引かれていた。
いや、引かれるなんてものじゃない。
身を引き裂かれる痛みだ。
グサグサの心臓から血が吹き出している。…ようだ。
一緒に来たアレン達に見つからないように、森の木に隠れて盛大にため息をついた。
何日かぶりに会ったプリシラが天使のように可愛い過ぎた。願わくば、あのまま2人きりで一緒にいたかった。
周りに人がいたため「お土産買って来るから」とか、カッコつけた。まぁ、街があんな状態では、お土産を買える店を見つけられる自信はないが。
プリシラは、もっと俺との一時的な別れを悲しんでくれると期待していた。
少しだけの淡い想い…。
まぁ、…泣かれても…困ったけどな。
ハハハ…はぁー。
プリシラに再会した時に感じたホロ苦い懐かしさと、心臓に広がった甘酸っぱさ。
あぁ、頭の中の全てがプリシラだ。
情けない思いを振り払うように頭を振った。
プリシラが、遠くの街にいる自分に会いに来てくれた事に、その事だけに、この命をかけられる。
古ダヌキを退治しなければ、プリシラを得られない。現国王との約束だ。
プリシラが欲しければ、邪魔する者をなんとかしなければいけない。まして、大臣の場合は国益に関する問題も抱えている。
一挙両得だ。
俺と…国王にしてみれば。
「ルーク、何を黄昏れているんだ?そろそろ行くぞ」
アレンとジャックが呼びに来た。
見れば、工場からは見えないところに騎士達が到着していた。