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あなたが好き

 うやうやしく大臣は会釈をしてから話し始めた。

「ジュリアン・エドモンド殿。ご丁寧なご挨拶を頂き感謝申し上げます。こちらにはいつまでご滞在でしょうか?屋敷で歓迎の宴でも開きましょう。そして…」


 大臣が私の方をゆっくりと見てくる。

 私の視界に入る大臣は、ううん…と(悩)もしかしたらたら私の…、心と目が曇っているせいなのかもしれないけど…。

 今、目の前にいる大臣が私には、黒い大きな塊にしか見えない。

 その塊大臣からは、黒いモヤモヤが煙のようにユラユラ昇っていて、その塊大臣の後ろには、黒い物体がニョキニョキと立っている。

 ニョキニョキは、家来か側近か、それはどっちでもいい私には関係ない…。黒い塊が黒大臣を守るために、黒大臣の後ろにボコボコと立っている。

 まったく、滑稽だわ。

 

「…。」

「プリシラ、どうしたの?」

 ポカーンと口を開けて、黙りこんだ私を兄様が肘で突付き呟いた。

 兄様に軽く頭を振って、もしかしたら、廊下で感じた不快感は大臣だったのかと思ったけれど、違和感の質が違う。

 あれはなんだったのかな…。

 心の中がモヤモヤしてしまう。

 

 黒大臣が眼光鋭く笑って言い放つ。

「異国の姫君、今日も見目麗しく眼福でございますな。ご機嫌は如何でございましょうか?」

 (…嘘つきだな)と思って兄様を見ると、兄様は、俯いて笑っている。

 笑っていないで助けなさいよね。と、思いながらもこわばる顔に作り笑顔を貼り付けた。

「お久しぶりでございます。先日は、ソフィア様のお茶会にお招き頂きありがとうございました(あぁ、そんな事もあったな…)」

 大臣が少し何かを考えている表情した。

「プリシラ姫はメイドの仮装の趣味はお有りですかな?」

 (…はい?あっ、ニルス王子の時か…)

「いいえ…。ありませんわ」と、にっこり笑った。


 大臣は黒いモヤモヤを発散させながら話しを続けた。

「あぁ、そうでしたか申し訳ない。実は、このホテルにルーク王子がお泊りと耳にしたので、お迎えに伺ったのですが一足遅かったようですな。いつ頃お帰りになるか聞いていたら教えてもらえませんかな?」

 私と目と目で話し合った兄様が残念そうに、本当に残念そうに答えた。

「仕事の事は一切話さない方なので…、まったく聞いていませんね…。残念ですが…」

 と、目線を逸らす兄様。

 (…何が残念なのだろう?)

「そうでしたか。お時間を取らせて申し訳なかったです。それでは、これで失礼します」

 私達が返事をするより早く、黒塊御一行は帰って行かれた。

 兄様は、それを見送りながら呟く。

「ふぅ~ん。ルーク王子の事が、相当気になるんだろうね」

「熱烈よね…」

「だなー。俺達の宴はどうなったんだ?」

「行ったら、ルーク様から絶交されるわよ…」

「それは困るな」

 気が抜けた私達は、しばらくはそのままでいた。



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