あなたが好き
ベッドから下りたプリシラは、昨日のことを頭の中で反芻した。
(…?)何故…ベッドで寝ていた?
昨日は、ルークとご飯を食べに行って、帰って来たあとはソファに座ったはず。
…なのに、ルークのベッドでグーグーと寝ていたなんて…これは乙女として問題ある。
…で、ルークはどこに行ったのかな?
そっと部屋から顔を出して、廊下の様子をこっそりと…見て見る。
朝も早いし、誰も…歩いていないな…。
上の階にある自分の部屋に行って…、それで、
「プリシラ、起きたの?」
コソコソと歩く私の背後からルークの声。
ゆっくりと…(恐怖体験者のごとく)振り向く。
「おはようございます。良いお天気で…」
アホっぽい私の返答に、ルークは笑いながら答えてくれる。
「おはよう。お腹空いただろう?みんな待っているから、朝食に行こう」
(えっ?いや、ちょっと待って。私、女の子だよ)
「ルーク、待って。私、顔も洗いたいし着替えたいの。だから、みんなと先に食べに行っていて。すぐに行くわ」
私のひきついた目いっぱいの笑顔に(あんまり見ないで、目ヤニ付いているかもしれないから)ルークも笑顔で返してきた。
「いや、一緒に食事に行った方がいいし、…それなら、プリシラの部屋まで送って行くよ」
(迷子になると思っているな…)
「大丈夫よ。部屋も分かるし、すぐにみんなのところに行くから」
(顔見ないで…、顔ベタベタなの)
「そうだね。じゃあ、下で待っているよ」
ルークは、少しだけ残念そうに帰って行った。
私は満面の笑顔で、戻って行くルークを見送ったあと、駆け足で自分の部屋に走り込んだ。
心臓がバクバクしている。
これは、走った心臓バクバクじゃなくて、寝起きの顔を見られた恥ずかしバクバク。
好きな人(?)に寝顔と寝相と寝起きの顔を見られた…。
一生の不覚…だ。
…。
だけど、乙女心とは裏腹にお腹は空くもので、急いで身仕度を整えて顔もちゃんと洗うと部屋のドアを思い切り開けた。
開け放されたドアの先の廊下が…、
…何故だろう。
空気がさっきと…違う?
考え過ぎじゃない。
(とにかく…みんなのところに急ごう…)
恐いことがあっても大丈夫。保護者がいっぱいいるからね。