あなたが好き
懐かしいルーク様。
光り輝く緑の森を抜ける風のように、爽やかな微笑みが完璧な王子様。
ご無事でしょうか?
お便りがないのが気になります。
心配が不安になって、毎日の色々な事が落ち着きません。
それで、それで…。
ルークは、ホテルの自室のテーブルで項垂れてしまった。
アレンは微笑み、ジャックはわけがわからずキョロキョロしている。
…ジュリアンはため息をつく。
ルークは聞いた。
「どうして、ここに?」
プリシラは答える。
「お手紙を途中まで書いていたんだけど…何なんだか…まだるっこしくなっちゃって、それで、それで…来ちゃいました!」
「それで、じゃなくて…」
ニコニコ微笑むプリシラと怒りたくても怒れないルークに、アレンがプリシラの両肩に手を置いた。その置いた手に、ルークの視線が突き刺ささった。
「まぁまぁ、ルーク。プリシラちゃんはルークが心配で駆けつけてくれたんだからね。ありがたいじゃないの?プリシラちゃんもジュリアン様もお疲れ様でした。さぁさ、2人きりにしてあげよう」
そう言うと、ジュリアンとジャックの背中を押して部屋を出て行った。
後に残った気まずい雰囲気の2人は、しばらくは黙っていたけれど、沈黙と嬉しさに耐えられなくってルークが照れながら聞いた。
「道中大変だったろう?恐いことにあわなかった?体は大丈夫?疲れてない?」
微笑むプリシラ。
「兄様も一緒だったし恐くなかったわ」
(久しぶりの馬車旅。むしろ楽しかった!)
「どうして、急にこっちに来たくなったの?」
(えー!これって迷惑がられているのぉ?)
「ルーク様、迷惑だった…?」
急にショボショボになったプリシラに、ルークは慌てて立ち上がり、プリシラの横に座って優しく微笑んだ。
「気持ちは大歓迎だよ。けど、大事な君を危険に巻き込みはしないかが、心配なんだ」
ルークはプリシラを目の前にして思っていた。
プリシラがまっすぐに俺の目を見ている。
ひいき目に見ても、可愛い。
どんなに会いたかったか、来てくれてありがとう。このまま時間が止まってしまえば、どんなに幸せだろう。
その、可愛いプリシラが可愛く言った。
「大丈夫よ。足手まといになるつもりはないわ。私は怪盗プリティになってルークを守るわ」
(ちょっと待て、なんだ?それ…)
プリシラ旅立ちの前の夜。
一生懸命に不安な気持ちを手紙に書こうとしても中々思うようにならずに、いい文書を読んでいる本から真似することにした。
懐かしいルーク様。
光り輝く緑の森を抜ける風のように、爽やかな微笑みが完璧な王子様。
(…なんか…違う。今の気持ちを書かなきゃ…)
ご無事でしょうか?
お便りがないのが気になります。
(そうそう、ペンがのってきたわ。腕がなるぞ。私天才!)
心配が不安になって、毎日の色々な事が落ち着きません。
(ダメだ。めちゃくちゃ不安になってきたぞ…どうしよう)
ぐるぐるする頭を本の表紙に載せた。…何かを注入されていたのかもしれない。
隣の寝室に走り込み、寝ていたジュリアンを起こした。
「明日、ルーク様のとこに行くことにしたの。兄様も一緒に行って!」
「夢だな。…プリシラ似の天使が呪いを囁いている…」
「お手紙よりも行った方が早いし、安心だわ」
プリシラの机の上には『美しき怪盗姫』の本と、書きかけの手紙が置いてあった。