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 王都の大臣邸。


 領地からの知らせは人が運ぶ場合、どんなに急いでも2日はかかる。伝書鳩なら、鳩の機嫌しだいでは1日で来る。

 今、読んでいる手紙は領地に住む親族からで、「怪しい人間があちらこちらで何かを探っている。そちらも気をつけろ」と、いう内容だった。

 機嫌の良い鳩だった場合を考えれば、…これは昨日の報告になるのか?

 

 大臣は苛立ち紛れに、拳でテーブルを叩いた。先日届いた手紙では、領地の納税書類を役所に疑われ、監査が入り追加納税が決まった。という報告だった…。

 そして、手紙の最後の方に、誰かの密告があった。…、と。

 クソ、誰なんだ。

 向こうでも犯人捜しはしている。が、いても立っても居たくない…。

 領地に戻る…か?

 いや…。

 …上手く立ち回らなければいけない。

 

 まったく、ソフィアが、さっさとルーク王子を落としていれば、ニルス王子の事もなかった。

 今、こんなことで…これ程までに、悩まずにいられたものを…まったくもって忌々しい…。

 さて、どう…するか…。


 エドモンド邸では…。


 夕食後。来週のお芝居の観劇のために、プリシラとジュリアン兄妹は、お肌と髪のケアに忙しくしていた。

 

 夜風で窓の外の木の葉が揺れる。

 地上の人々や、全ての命あるもの、それらに寄り添う全ての物質の上に、瑠璃色の天井が広がり、月のライトと星のカーテンが、風の揺らぎで優しく穏やかに揺れ動く。


 翌日のルーク達はジャックを道案内に伴い、街はずれにある工場の前で、建物の陰に隠れ身を潜ませていた。

 今日も荷車で、何人もの人達が工場の中へ運ばれて行った。

 

 あの工場では人々をタダでこき使い、安っぽい麻薬を作り、それを大臣の親族が秘密裏に売り捌いている。その安っぽい麻薬は王都でも犠牲者を出していた。

 工場は考えたくないが、ここだけではないはずだ。


 意を決したように、大地を踏みしめるルーク。

 アレンは、緊張に震えるジャックを見ながら聞いた。

「…ジャック、なんだ怖いのか?」

「明るいところでは…緊張するんです。それに、これは武者震いです」

「それは、実に…頼もしいな」

 微笑むルーク。

 笑うアレン。

 優しく、緊張がほぐれていく。


 朝のエドモンド邸。


 ノックのあとに、プリシラの部屋に入ったウエラが派手にカーテンを開けた。

 今まで薄暗かった部屋に、一気に朝の光が弾け飛んだ。


「姫様、起きて下さい。朝ですよ。朝ご飯食べちゃって下さい」

「おはよう。ウエラ…。うん、頑張る」

 ベッドからノソノソと下りて、ゆっくり大きく背伸び!


 今日は、家族みんなでお買い物です。

 街へウィンドウ・ショッピンです。

 つまり、観劇が楽しみ過ぎて家にジッとしていられないってやつです。

 中身は、小さな子供と一緒です!



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