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251話 漆黒のソード

 ソラは、そのソードを見て驚愕した。


 ――黒い……ソード?


 何故なら、これまで黒を基調とするソードはこの世界に存在しなかった……否、存在する意味が無かったと言った方が正しいか。


 ソードは核とする聖霊の属性に対応した色を基調としなくては性能を完全に発揮出来なくなる為、炎属性なら赤、水属性なら青というように、例え自身の騎体属性を曝す事になったとしても属性に対応した色を騎体のメインカラーにする。


 しかし、八大属性の中で黒を象徴する闇だけは、これまでの歴史上においても守護聖霊に持つ騎士が存在しない為、闇を核とするソード――即ち黒を基調としたソードは存在しない筈なのだが。


 ――はったりなのか? それとも……いや、そんな事よりもこいつは聖衣騎士……騎士師団長か! 


 ソラは、目の前の黒いソードを操刃する聖衣騎士が騎士師団長である事を確信すると、雑念を振り払いウルとオズヴァルドへと伝声を行う。


「ウルさん、オズヴァルド、残りのクレイモアの撃破を頼む。こっちも一騎のソードの起動を確認した。こいつは……俺がやる」


 ソラは二人にそう伝え、再び竜域に入ると、羽刀型刃力剣(スサノオ)を霞に構え、再度戦闘態勢を取った。しかし、ソラは気付く、自身の操刃柄そうじんづかを握る手が無意識に振るえているのを。そしてソラは冷静に自身と相手の考察をする。


 ――竜域に入っている俺に恐怖の感情は無い筈だ……これは、生物としての本能が警告しているのか? こんな事初めてだ。翼羽団長とも、シェールとも、アークトゥルスやレオとも違う。こいつは何かが……


 直後、目の前の黒いソードから相互伝映と相互伝声の許可を求められ、ソラは晶板を押下して許可した。すると、晶板に黒いソードを操刃する騎士の姿が映し出された。


 ショートボブにした黒紫(こくし)色の髪、陰陽の仮面を被り、左胸に竜の翼を抽象的に描いた紋章を刻むその騎士は、第四騎士師団〈久遠(くおん)の翼〉師団長アイビス=エクレシアである。


『やあ、はじめまして……だね。君がソラ=レイウィングでいいんだよね?』


 その声を聞き、ソラは再び驚愕する。それはソラがよく知る人物の声だったからだ。そしてあらゆる感情と考察、雑念が沸き上がり、いつの間にか竜域が解除される程にソラは動揺を隠せなかった。


 ――エルと……七年前にエルを連れて行ったオルタナ=ティーバと同じ声だ。でも分かる、こいつはエルじゃない、そして何となくだけど分かる、七年前のオルタナ=ティーバとも違う……こいつは一体!


 すると、アイビスが操刃する黒いソードが右腰に接続され背部に収納された砲身を展開した。そしてその砲身に光が収束していく。


 ――刃力核直結式!


 集束した光が奔流となって放出されたと同時、ソラは再び竜域に入り、叢雲に回避行動を取らせてかわすと、黒いソードへと向かって行く。


 対し、黒いソードもまた左腰から刃力剣(クスィフ・ブレイド)を抜くと、ソラの叢雲へと向かって行った。


 空中で剣を激突させる両者。そこには激しい風圧が巻き起こった。すると鍔迫り合いを行いながら、アイビスがソラへと伝声する。


『君の事は“ヒトツメ”から聞いているよ。“ナナツメ”をかどわかし、不要な心を与えてしまった危険因子だと』


 ――ナナツメ……エルの事か。ならあの時のオルタナ=ティーバがヒトツメという事か?


「何なんだお前は? 何なんだオルタナ=ティーバとは? お前はエルの何なんだ?」


『君が知る必要は無い、何故なら君はここで果てるのだから』


 次の瞬間、アイビスの黒いソードが剣を振り切り、ソラの叢雲を後方へと弾き飛ばした。


『この心許ない膂力、その宝剣の属性は君の守護聖霊と一致していない、それどころか恐らく最も相性が悪いと見た。君こそ何のつもりだい?』


「黙れ」


 直後、ソラは間合いを一瞬で潰し、渾身の袈裟斬りを繰り出した。


 しかし、その一撃は空中の木の葉に鉄塊を振り下ろすが如き手応えで、アイビスの黒いソードに受け流されていた。


 ――これは、ベルフェイユ流剣術!


 更に、態勢を崩したソラの叢雲に黒いソードからの連撃が襲いかかる。


 ソラは咄嗟に、叢雲に右腰から羽刀型刃力剣(スサノオ)を抜かせて二刀流になると、その嵐の如き連撃を何とかさばいて防いだ。


 ――今のはラムイステラーハ流剣術、そしてベースはレイ・レグナント流剣術……こいつも俺みたいに複数の剣術を扱えるのか。


 ソラは一旦、黒いソードと距離を取ると、左手の羽刀型刃力剣(スサノオ)を納刀し、左前腕に装着された盾の内側から刃力弓(クスィフ・ドライヴアロー)を射出させて左手で受け取った。


 続けて両肩部を開放すると、内部から八角形の鏡のような物体を射出する。


「行け、空間浮遊式刃力跳弾鏡(ヤタノカガミ)


 すると、八角形の物体は黒いソードの周囲を飛び交い、それぞれ八角形の光の膜を形成した。


 それは二年前に、翅音(しおん)が〈亡国の咆哮〉の元に単身向かおうとするソラの為、叢雲へと密かに装備させた聖霊騎装、空間浮遊式刃力跳弾鏡(ヤタノカガミ)であった。


 ソラは、左手の刃力弓(クスィフ・ドライヴアロー)から光矢を四発発射すると、周囲を浮遊する光の膜に着弾と反射を繰り返し、黒いソードの腹部、背部、右腕部、左脚部へと次々と直撃させた。


『これは……全方位攻撃』


 致命打こそ受けてはいないが、怯んだ様子の黒いソードに、ソラが追撃する。


「ハアアアアッ!」


 ソラは、都牟羽(つむは) (ぜろ)憑閃(つきかがや)により刃力を収束させた羽刀型刃力剣(スサノオ)を袈裟掛けに振るう。それにより放たれる光の刃、それはまさしく都牟羽(つむは) 壱式 飛閃(ひせん)


 そして飛翔する神速の光刃が、アイビスの駆る黒いソードを――両断した。


 次の瞬間、黒いソードは空中で爆散し、爆炎と爆煙を舞い上がらせた。


「倒せた……のか?」


 本能が恐怖する程、強大だと認識した敵。しかし、そのあまりの手応えの無さに、違和感を覚えるソラ。だが、爆散したソードは目の前から消失しており、当然晶板に映し出されていた反応も消失していた。


 その直後、オズヴァルドからの伝声がソラへと入る。


『こっちは終わったぞソラ=レイウィング。お前はきっちりと仕事をこなしたんだろうな?』


「ああ、こっちも終わった……とりあえずはだけど」


 竜域を解除してソラが答えると、二人の間にウルが割って入り指示を出した。


『よし、これで任務は達成だ。もう玄の空域に用はねえ、増援が来る前に撤退するぞお前ら』



 こうして飛空艇の撃墜と、新型量産剣クレイモアの破壊、そして期せずして第四騎士師団長アイビス=エクレシアの撃破に成功したソラ達は、玄の空域からの撤退を開始するのだった。

251話まで読んでいただき本当にありがとうございます。もし作品を少しでも気に入ってもらえたり続きを読みたいと思ってもらえたら


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どうぞ宜しくお願い致します。


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