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234話 意志を継ぐ者達

 直後、エイラリィとカーテナの額に剣の紋章が輝き、両手に淡く青白い光が灯ると、カーテナは両手を合わせた。次の瞬間、カーテナを中心に淡く青白い光が広がり、地に伏せていた数騎のパンツァーステッチャーが一度に修復されていく。


 推進刃の損傷が修復され、飛翔能力を取り戻したパンツァーステッチャー。二年前は、直接掌を当てる事で一騎を対象にしか能力を発動出来なかったエイラリィであったが、領域内に居る対象に能力を発動させ、複数騎を同時に修復するという能力を得ていたのだった。


 すると、推進刃が修復された守衛騎士達に向け、エイラリィが進言した。


「とりあえずはこれで飛べる筈です。ここは私達に任せてあなた達は一旦退避していてください」


『し、しかし』


「属性相性が不利なパンツァーステッチャーでは邪魔になるだけです。こんなところで貴重なソードと騎士を失うのは馬鹿げていると思いませんか?」


『……わかりました』


 淡々とした口調でエイラリィに説得され、守衛騎士達は撤退を開始する。


『逃がすかよ、撃ち落とせ!』


 しかし、それを見た空賊の頭領は、部下達に飛び立とうとするパンツァーステッチャーへの攻撃を指示し、空賊達のカットラスが一斉に刃力弓(クスィフ・ドライヴアロー)を向けて光矢を発射した。


 次の瞬間、デゼルのベリサルダが抗刃力結界(イノセントスフィア)を発動させて半透明の白色の球体に包まれると、空賊達のカットラスの前に立ちはだかり、その光矢を悉く受け止めてみせた。



 対し再度歯噛みする空賊の頭領であったが、すぐにほくそ笑んだ。


 ――あの宝剣、耐実体結界(アブソリュートスフィア)抗刃力結界(イノセントスフィア)……結界を二種類も装備してやがる。馬鹿が、いくら支援騎士とはいえ結界を二種類装備している時点でまともな攻撃用の聖霊騎装は装備出来ねえ、どれ程防御力が高かろうが囲んでボコればそれで終いだ。


 ソードは核となる聖霊石の純度によって装備出来る聖霊騎装の容量が決まっている。しかし、数ある聖霊騎装の中でも結界系の聖霊騎装は圧迫する容量が大きい為、純度の高い聖霊石を核とする宝剣であっても通常、ソードは結界を一種類しか装備しない。二種類装備すれば、刃力容量の少ない盾付属型聖霊騎装を除いた殆どの聖霊騎装を装備する容量の余裕が無くなってしまうからだ。


「まずはてめえからだ!」


 直後、三騎のカットラスが刃力剣(クスィフ・ブレイド)を抜き、騎体を高速で推進させベリサルダへと同時に斬りかかった。


 その刹那、一騎のカットラスの頭部にベリサルダの盾の先端が突き刺さり、カットラスは頭部から爆炎を噴出させながら落下していく。


「なっ!」


 防御一辺倒であると踏んでいたベリサルダからの思わぬ反撃に、斬りかかろうとしていた二騎のカットラスを操刃していた空賊は、動揺しながらもそのままベリサルダへと攻撃を開始する。


 しかし、左右からの斬撃に対し、デゼルのベリサルダはいともたやすく両手の盾でそれを受け止めると、その勢いを受け流した。


「こ、これはまるでベルフェイユ流の!」


 その動きに、空賊達がベルフェイユ流剣術を彷彿とさせた次の瞬間、ベリサルダの両手の盾の先端が二騎のカットラスの腹部にそれぞれ突き刺さり、動力部にまで達していた。


 そして、盾付属型聖霊騎装である砕結界式穿開盾(リフューザルシールド)による効果で、ベリサルダの盾の先端が左右に開放され、動力部を完全に破壊した。


「があああああっ!」


 空賊の断末魔を響かせながら、その場で爆散するカットラス。



 すると、爆煙の中で双眸を輝かせるベリサルダの操刃室にて、デゼルが想いを馳せる。


 ーー僕は今まで皆に背負わせてばっかりだった。守るだなんて言って、結局僕は覚悟が足りない、逃げていただけだったんだ。


「剣は未だに握れない、でも……防ぐだけが盾の仕事じゃないんだ!」


 そしてデゼルは覚悟を秘めた目で、敵部隊と激闘を繰り広げた。


 その後、ベリサルダはカーテナを援護しつつ、かつカーテナからの援護攻撃を受けながら、敵のカットラスを一騎、また一騎と撃墜させていく。


 強固な装甲、二種類の結界の使い分け、ベルフェイユ流剣術を盾術に応用させた巧みな受け流し、そして盾による刺突攻撃により空賊を圧倒し、竜殲術(りゅうせんじゅつ)すら使用するまでも無く、その数を半数近くまで減らしていた。


「ば、馬鹿な! そんな馬鹿な!」


 たった二騎に部隊を半壊させられ、空賊の頭領は恐怖に顔を歪めた。しかしそれでも空賊達は撤退の意思を見せず、各々が聖霊騎装を構え、ベリサルダとカーテナへと攻撃を続けるのだった。


 その時、空賊と交戦中のデゼルに向け、とある人物から伝声が入る。


『おいデゼル、そろそろいいか? こっちはいい加減待ちくたびれてんだ』


「フリュー」


 その声の主はフリューゲルであり、フリューゲルは愛刀であるパンツァーステッチャーに搭乗し狙撃点から戦況を伺っていた。そして右腰に接続され背部に収納されていた砲身を展開している。


 すると、デゼルは後頭部を掻きながらフリューゲルに返す。


『うん、それじゃあ後は頼むとしようかな』


『こちらはいつでもいけますよ』


 更に、フリューゲルのパンツァーステッチャーの前には、円状の門が形成されている。エイラリィが操るカーテナの肩部聖霊騎装、浮遊式刃力増幅門(エンハンスゲート)である。


「烏合の衆相手にゃこいつが丁度いい、まとめて射殺(いころ)す!」


 フリューゲルとパンツァーステッチャーの額には剣の紋章が輝いており、フリューゲルの竜殲術〈天眼(てんみとおすまなこ)〉にて敵の動き及び敵の隙を把握した。そしてパンツァーステッチャーが構えるのは散開式刃力砲(クスィフ・ディスパーションカノン)。光の聖霊の意思と分裂の特性を持つ土の聖霊の意思を組み合わせた刃力核直結式聖霊騎装であり、複数の目標に光の矢を一斉に放つことが出来る。


 フリューゲルは今回、普段装備している狙撃式刃力砲(クスィフ・ペネトレイトカノン)ではなく、複数を同時に攻撃出来る散開式刃力砲(クスィフ・ディスパーションカノン)を選択して装備していた。


 散開攻撃は複数に対し攻撃する事が出来るが、射程はその分短く、同時に照準固定を調整しなければならない為、精密な狙撃には当然適さない。しかし――


 散開式刃力砲(クスィフ・ディスパーションカノン)の砲身に収束された巨大な光の玉が無数の光の矢となって同時に放たれると、浮遊式刃力増幅門(エンハンスゲート)を通り、更に鋭い光矢となって空賊のカットラスに向かって放たれた。



 時を同じくして、空賊の頭領には味方騎からの警告の伝声が入る。


(かしら)、遠距離から高刃力反応! 恐らく敵増援からの砲撃が来る!』


「ちいっ! 全騎一旦退避、後退しつつ砲撃を(かわ)せ!」


 空賊の頭領は、来るであろう砲撃に備え一旦の後退を指示する。しかし、空賊の頭領が操刃するカットラスを含め、全騎が何かに退避を阻まれていた。


「何だこりゃ……壁? いや――」


 空賊のソード達の背後に形成され、退路を阻んでいたもの。それは壁の如き巨大な一つの光の盾。デゼルの竜殲術〈守盾(まもりのたて)〉によるものである。


 次の瞬間、無数の光矢が、十五騎のカットラスの腹部にある動力の核を的確に射抜いた。


「ば、馬鹿な……あんな距離から散開攻撃で複数狙撃だと? ……ば、化け物が――うわああああっ!」


 驚愕と共に空賊の頭領のカットラスは爆散し、同時に全ての空賊が駆るカットラスも爆散。空賊達はフリューゲル、デゼル、エイラリィ達の奮闘により全滅するのだった。

234話まで読んでいただき本当にありがとうございます。もし作品を少しでも気に入ってもらえたり続きを読みたいと思ってもらえたら


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どうぞ宜しくお願い致します。


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