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226話 竜を継ぐ者

 しかし、刃として具現化を果たしている刃力剣は実体攻撃。であれば裂爪式斬竜剣(トリヴィクラマセーナ)の刀身を五本にし、実体攻撃耐性を最大にしておけば通じない。そうシェールが考え、裂爪式斬竜剣(トリヴィクラマセーナ)の刀身を五本にして、ソラの斬撃を躱さずにやり過ごそうとした――その時。


 ――この剣は!


 だが、シェールはカレトヴルッフから振り下ろされる刀身が金色(こんじき)に輝いている事に気付くと、咄嗟に受け太刀の姿勢で防御する。


「ぐううううっ!」


 瞬間、先程のシェールが繰り出した渾身の一撃を凌ぐ程の、霹靂(へきれき)の如き凄まじい轟音と衝撃波が巻き起こった。


 それでもシェールは、アパラージタの推進刃からの刃力放出を最大にし、吹き飛ばされず鍔迫り合いの状態でその場に何とか留まる。


 しかし直後、アパラージタはカレトヴルッフからの横蹴りを胸部に叩き込まれ吹き飛ばされた。


「カハアッ!」


 ――この動き……まるで!


 シェールがソラに、翼羽の姿を重ねた瞬間、カレトヴルッフの金色(こんじき)に輝く刃力剣(クスィフ・ブレイド)から光の刃が放たれ、シェールはそれを咄嗟に盾で受け止めるも、刃力攻撃耐性が最小の状態であった為、盾ごと左上腕部を斬り裂かれた。


「光の刃……何だ、やっぱり君もラドウィードの騎士だったんだね」


 するとシェールはアパラージタの両肩部を開放させ、追尾式炸裂弾(アーティファクト)を一斉発射させる。それにより、空中に無数の航跡を描きながらカレトヴルッフに飛来する炸裂弾。


 対し、ソラのカレトヴルッフから幾重もの剣閃が(はし)り、炎の聖霊と雷の聖霊の意思が込められた弾頭部分だけが切断、アーティファクトが空中で爆散する。


 すると、アパラージタはカレトヴルッフの上空から追撃、再び両肩部からの追尾式炸裂弾(アーティファクト)一斉発射を行った。


 直後ソラは、カレトヴルッフの右腰部に接続された炎装式刃力砲(クスィフ・ブレイズカノン)を展開し咄嗟に放つ。それにより追尾式炸裂弾(アーティファクト)は全て薙ぎ払われ空中で爆散。更には炎を纏った光の奔流がアパラージタに襲い掛かった。


 シェールはそれを即座に回避。そしてその時の裂爪式斬竜剣(トリヴィクラマセーナ)の刀身は三本であった。何故ならどちらかに耐性を極振りした状態では先程のように隙を突かれ、寝首を掻かれかねない。つまりシェールにとって今のソラはそれ程の脅威であったのだ。



 ――炎装式刃力砲(クスィフ・ブレイズカノン)はもう撃てないか。


 ソラが放った炎装式刃力砲(クスィフ・ブレイズカノン)はこれで計三発。翡翠の空域での戦闘で消費した刃力もある事から、残存刃力は残り僅かであった。


 するとソラは、躊躇いもなく炎装式刃力砲(クスィフ・ブレイズカノン)を右腰部から切り離して放棄すると、放たれた矢の如く加速したカレトヴルッフが金色(こんじき)の刀身をアパラージタへと振るう。


 刃と刃を交叉させ、互いの剣閃と剣閃が幾度となく激突の火花を散らしながら空中に螺旋の航跡を残す。


 すると、ソラはアパラージタから一旦距離を空け、左腰部に接続された雷電螺旋加速式投射砲(ヤサカニノマガタマ)の砲身を展開、電磁加速され超回転を加えた音速の砲弾がアパラージタを狙う。


 しかし、アパラージタは先程と同じように裂爪式斬竜剣(トリヴィクラマセーナ)で砲弾を切り払い、左右に分かれた砲弾の残骸が彼方へと飛ぶ。


 次の瞬間、砲弾を計三発放ち、残弾の無くなった雷電螺旋加速式投射砲(ヤサカニノマガタマ)を左腰部から切り離し放棄する事で、加速力を更に増したカレトヴルッフが、アパラージタの間合いへと瞬時に入り、斬撃を放ち終わった不安定な体制のアパラージタへと真向斬りを繰り出す。


 だが、シェールはアパラージタの展開式竜咬刃力爪(ヴリトラ)による副腕でそれを白羽取りしてみせた。


『あはあ、惜しかったね』


 そしてカレトヴルッフの動きを抑えた状態から裂爪式斬竜剣(トリヴィクラマセーナ)で反撃の振り下ろし。


 対しソラは、刃力剣(クスィフ・ブレイド)の刀身を一旦消失させ、動きを抑えられた状態を解除すると、左前腕の盾でそれを受け止める。


 それにより盾を崩壊させながら吹き飛ばされるカレトヴルッフ。


 しかし、ソラは体制を瞬時に立て直して刃力剣(クスィフ・ブレイド)の刀身を再構築させると、両肩部を開放させ、空間浮遊式刃力跳弾鏡(ヤタノカガミ)を射出。八角形の小さな物体が八基、アパラージタの周囲を飛び交いながら、それぞれ八角形の光の膜を形成させる。



「へえ、見た事の無い聖霊騎装だね」


 初見の聖霊騎装である空間浮遊式刃力跳弾鏡(ヤタノカガミ)に対し、全ての動きを視線で追いながら警戒を置くシェール。


 次の瞬間、カレトヴルッフの刃力弓(クスィフ・ドライヴアロー)から放たれる四発の光矢が、空間浮遊式刃力跳弾鏡(ヤタノカガミ)に着弾と反射を繰り返し、アパラージタの頭部、胸部、腹部、右肩部にそれぞれ炸裂した。


 だが、いかに裂爪式斬竜剣(トリヴィクラマセーナ)の刀身が三本で、アパラージタの刃力攻撃耐性が通常の状態とはいえ、その装甲はあのシャムシールですら凌ぐ程堅牢なものであり、ソラと相性の悪い聖霊の意思を利用した空間浮遊式刃力跳弾鏡(ヤタノカガミ)による攻撃では、当然アパラージタに致命打は与えられない。


跳弾(ちょうだん)ね……でもそんな豆鉄砲じゃこのアパラージタに傷一つ――」


 ――突撃!?


 しかし、ソラは光矢の発射と同時に突撃を開始しており、空間浮遊式刃力跳弾鏡(ヤタノカガミ)による攻撃を牽制にして接近戦を仕掛けたのだ。


「射術で牽制しつつ間合いを詰めて斬撃……か」



 だが、シェールはソラの手の内を見透かしたと言わんばかりに、口の端を上げてほくそ笑んだ。


「さっきからワンパターン、見え見えなんだよ!」


 刃力剣を振りかぶるカレトヴルッフに対し、シェールは裂爪式斬竜剣(トリヴィクラマセーナ)による最速の突きを放つ。


 最短距離を行くシェールのカウンターの突きは、ソラが繰り出した斬撃よりも速くカレトヴルッフの胸部を穿(うが)つ……かに思えた。


 次の瞬間、カレトヴルッフが突撃と同時に密かに発射していた一発の光矢が、着弾と反射を繰り返し、自身の後方に浮遊する一基の空間浮遊式刃力跳弾鏡(ヤタノカガミ)に反射すると、カレトヴルッフの振り上げた刃力剣に命中し、袈裟斬りに凄まじい(はや)さをもたらした。


「なっ、剣速を加速させ!」


 その一撃は、シェールの最速最短の一撃よりも尚(はや)く、アパラージタの鎧胸部を袈裟懸けに斬り裂いた。


「ぐうっ! やってくれるね、君も(・・)


 しかし、シェールは寸前で突きを止めて超反応し、騎体を後退させる事で致命の一撃を免れていた。


 また、ソラは奇襲を用いた渾身の攻撃を躱され、アパラージタと再度距離を取る。


 幾度となく突撃を繰り返し、一見シェールと互角に思える攻防を繰り広げるソラであったが、牽制、奇襲、あらゆる策を講じ、あらゆる武器を用いては使い捨て、食らい付く事で騎体性能差を何とか埋めている状態であった。


 そしてソラは、無我の状態で冷静に戦況を分析していた。


 ーー浅い……騎体性能差は歴然、長引けば長引く程不利になる。


 すると、起伏の無い冷淡な声で言い切る。


「――でも、次で殺しきる」


 そしてカレトヴルッフの左手の刃力弓(クスィフ・ドライヴアロー)と右手の刃力剣(クスィフ・ブレイド)を構えさせる。


 次の瞬間、シェールは遂に、ソラに対して展開式竜咬刃力爪(ヴリトラ)を起動させた。すると、両腰部の副椀から光の爪が出現し、彼方まで伸長する。


 シェールはそれを振るい、周囲の空間浮遊式刃力跳弾鏡(ヤタノカガミ)を切り裂き、破壊していく。


 更にはカレトヴルッフにも光の爪が幾度となく襲い掛かり、荒れ狂う光の爪を、ソラのカレトヴルッフは紙一重で躱していた。


 しかし、空間浮遊式刃力跳弾鏡(ヤタノカガミ)は全て薙ぎ払われてしまい、これでカレトヴルッフは、砕結界式穿開盾(リフューザルシールド)炎装式刃力砲(クスィフ・ブレイズカノン)雷電螺旋加速式投射砲(ヤサカニノマガタマ)空間浮遊式刃力跳弾鏡(ヤタノカガミ)を失い、遂に残された武装は刃力剣(クスィフ・ブレイド)一本と刃力弓(クスィフ・ドライヴアロー)一丁となった。


 だがそれでもソラのカレトヴルッフは、荒れ狂うヴリトラの光の爪を、皮一枚で躱し続ける。


『あーもう、いい加減汚い汁ぶちまけなよ』


 するとシェールはそう言い放ち、光の爪が伸長する展開式竜咬刃力爪(ヴリトラ)の副椀を大きく広げると――ツァリス島に倒れている叢雲へと狙いを定めて、それを交叉させようとする。


 直後、ソラは騎体を急発進させアパラージタと叢雲の直線上に割って入った。そして叢雲を守るように立ちはだかるカレトヴルッフを斬り裂かんと、左右から容赦なく迫り来る光の爪。


 ……しかし、それこそがソラが待ち望んだアパラージタの攻撃であったのだ。


 ソラはカレトヴルッフをその場で廻旋(かいせん)させながら刃力剣を振るい、金色(こんじき)の刀身から光の刃を放つ。


 それは正に都牟羽(つむは) 参式 閃空。カレトヴルッフを中心にして広がる円状の光刃が、迫り来る展開式竜咬刃力爪(ヴリトラ)の光の爪を受け止めた。それにより展開式竜咬刃力爪(ヴリトラ)の動きが一時封じられる。


 刹那、ソラはカレトヴルッフの左手の刃力弓(クスィフ・ドライヴアロー)を放棄すると、刃力剣(クスィフ・ブレイド)を両手持ちにて霞に構え、四本の推進刃が崩壊を来す程に高圧力の刃力を放出させ、弾け飛ぶが如く騎体を加速させた。


「ハアアアアッ!」


 それは運命を別つ、ソラの最後の一撃だった。

226話まで読んでいただき本当にありがとうございます。もし作品を少しでも気に入ってもらえたり続きを読みたいと思ってもらえたら


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どうぞ宜しくお願い致します。


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