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213話 増援

 場面は黝簾(ゆうれん)の空域。


 アルテーリエは、ヴァーサとウェルズ達からの猛攻を受け、致命傷をぎりぎりで避けながらも、騎体は既に半壊状態に陥っていた。


「ハアッ、ハアッ、ハアッ!」


 戦況を打破する為に最前線に躍り出たアルテーリエであったが、防戦一方であった。


 円状の光陣を通り、超速で突進しながら斬りかかって来るヴァーサのイェクルスナウトの斬撃、それを何とかさばきつつも、その意識と動きの隙を突き、狙撃騎士が放つ雷を纏った光矢が無数に飛来する。


 それを凌ぐためにアルテーリエは、常に〈血殺(せんけつのさばき)〉で形成させた結界を張り続ける必要があった。


 また、〈血殺(せんけつのさばき)〉による攻撃は抗刃力結界(イノセントスフィア)耐実体結界(アブソリュートスフィア)、いずれの結界にも干渉せず敵を攻撃出来るが、逆に〈血殺(せんけつのさばき)〉により形成させた結界は刃力攻撃、実体攻撃、いずれにも干渉する為、どちらの性質の攻撃も防ぐ力がある。


 しかし、その結界も当然損傷を受ければ消滅し、込められた刃力と血液が失われる。そしてその両者は既に、底を尽き始めていた。


 すると、ヴァーサとヴァーサのイェクルスナウトの額に剣の紋章が輝き、イェクルスナウトの前方に円状の光陣が複数出現した。


 その竜殲りゅうせん術の名は〈空駆(そうてんしっく)〉。任意の場所に出現させた光陣をくぐった物質を加速させる効果があり、光陣を重ねる程加速は増す。


 光陣の同時出現最大数は五つであり、ヴァーサは今五つの光陣を出現させ、最大加速にてアルテーリエのミームングを撃墜させようとしていた。


「そう何度も同じ手を!」


 すると、凄まじい加速力を誇るとはいえ、直線的に突進してくるイェクルスナウトの動きを予測し、アルテーリエはミームングの疑似血液による円錐状の槍を形成させた。敵の突進を迎撃し、串刺しにする為だ。


 次の瞬間、ヴァーサのイェクルスナウトの両肩部が開放され、射出式斬戦輪(スラッシュフルムーン)という名の高速回転する輪状の刃が二発射出された。


 射出式斬戦輪(スラッシュフルムーン)は五つの光陣を通過すると、風を越え、音を越え、凄まじい速度でアルテーリエが形成させた血液の槍を切断し、更にはミームングの血液の結界を破壊する。


 ――射撃を加速させた!


「しまっ――」


 更に、結界を失ったミームングに向けて雷を纏った光矢が四つ飛来し、両腕部と右側の二本の推進刃に直撃。ミームングの両腕部と片側の推進刃が破壊された。


 そこへ更なる追撃、ヴァーサのイェクルスナウトが完全に体制を崩したミームングの鎧胸部に向けて、刃を振り下ろす。


「くっ!」


 迫り来る凶刃、もはやアルテーリエにそれを防ぐ手立ては無く――



「何!?」


 次の瞬間、その一撃は何かに弾かれ、ヴァーサはアルテーリエを仕留め損ねた事に歯噛みする。


 そして、自身の一撃を遮ったとあるものが、自身のイェクルスナウトとアルテーリエのミームングの間に出現しており、その正体は半透明の光の盾であった。


『ちっ……増援か』


 ヴァーサは増援の出現を確認し、舌を鳴らした。


 直後、放たれた無数の光矢が、ヴァーサのイェクルスナウトを含む〈風導(かざしるべ)(たてがみ)〉〈操雷(そうらい)(ひげ)〉部隊に飛来し、騎体が次々と貫かれていった。



 一方、増援は望めないと踏んでいたアルテーリエは呆然と立ち尽くしていた。


 自身の危機を救ったのはデゼルのベリサルダ。一斉射撃を行い敵部隊に猛攻を仕掛けるのは、オルレア島に待機していたパンツァーステッチャーとマインゴーシュ、合わせて五十騎のソード。


「増援………助かった」


 ほっと胸を撫で下ろしたように呟く、満身創痍のアルテーリエ。


 更に、ヴァーサのイェクルスナウトの背後から音も無く、斬撃を放つのはシーベットのスクラマサクス。


 ヴァーサのイェクルスナウトが咄嗟に振り返り、その一撃を遮ると、互いに逆手に持った剣同士が交叉する。


『〈寄集(よせあつめ)隻翼(せきよく)〉の……スクラマサクスか』


 すると、ヴァーサはシーベットのスクラマサクスの左胸に刻まれた紋章に気付いたのか、意味深に呟いた。

 


 一方、増援部隊から大きく後方の空域にて、フリューゲルと、フリューゲルのパンツァーステッチャーの額には剣の紋章が輝いており、遠見と透視により遥か彼方と対象の隙までをも見通す竜殲術〈天眼(てんみとおすまなこ)〉により、ウェルズのラーグルフへと照準を合わせていた。


 そして腰部に接続された砲身を展開し、狙撃式刃力砲(クスィフ・ペネトレイトカノン)による敵の射程外からの超長距離狙撃を試みる。直後、砲身から稲妻を纏った巨大な光矢が、ウェルズのラーグルフへと一直線に放たれた。


 ウェルズは、自身に迫り来る脅威を感じ取り、咄嗟に回避行動を取る。


「ぐうっ!」


 しかし、敵の狙撃に集中していた為僅かに反応が遅れ、ラーグルフの右脚部を貫かれた。


 そして自身の騎体を狙撃した敵が、探知器で探知出来るぎりぎりの範囲内からの超長距離狙撃を行って来た事を知り、その凄まじい狙撃技術に感嘆すると同時に、闘争心が沸き上がる。


「この超距離からの精密狙撃。恐らくは刃力核直結式聖霊騎装による砲撃。何という腕だ……面白い、相手にとって不足は無い!」


 するとウェルズと、ウェルズのラーグルフの額に剣の紋章が輝き、両手に持つ狙撃式刃力弓(クスィフ・スナイプアロー)と、両腰部に固定されながら刃力核直結式聖霊騎装でなはい、特別仕様の狙撃式刃力弓(クスィフ・スナイプアロー)、計4つの狙撃式刃力弓(クスィフ・スナイプアロー)をフリューゲルのパンツァーステッチャーに向けた。



 一方アルテーリエには伝令員からの報告が入る。


『戦況報告、現在メルグレインの〈因果の鮮血〉部隊は八十八騎を撃墜されましたが、五十騎の増援により現在残り百七十騎。敵部隊の撃墜数は五十四騎、残り四百四十騎』


 依然として圧倒的不利な状況は変わらないが、藁にも縋る状況で現れた増援は正に渡りに船であった。


 ――恩に着る、ヨクハちゃん。


 すると、アルテーリエに向けデゼルからの伝声。


『アルテーリエ様、ここは僕達に任せて退がって下さい。そして再度部隊の指揮を!』


「すまん」


 そして、アルテーリエは増援部隊に前線を任せ、半壊したミームングで王城付近へと後退を開始するのだった。


 ――しかしツァリス島には〈裂砂の爪〉部隊が向かっていた筈、こちらにこれ程の増援を送ってヨクハちゃんは大丈夫なのか?


 アルテーリエの一抹の不安は消え去る事は無い、しかし今はこのメルグレインを死守する事だけで精一杯であった。


213話まで読んでいただき本当にありがとうございます。


ブックマークしてくれた方、評価してくれた方、いつもいいねしてくれてる方、本当に本当に救われております。


誤字報告も大変助かります。これからも宜しくお願いします。

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