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194話 空地激戦

 西方進撃部隊、空翔部隊。


 リーンハルトが駆るナーゲルリングは一騎だけ突出しながら最前線にいた。そしてそんなナーゲルリングに向け、敵部隊のシャムシールとタルワールが光矢の雨を放ち続ける。


 属性相性、そしてナーゲルリングの異常なまでの装甲の薄さ。攻撃が一撃でも掠れば致命傷は免れない。そんな状況の中、リーンハルトのナーゲルリングは舞い散る木の葉や羽根の如き軽やかな動きで、その全てを躱し続けていた。


「はは、俺の恋人を傷物にされてたまるかっての」


 直後、リーンハルトは軽口を叩きながらナーゲルリングの肩部を開放させた。


「行ってきな、思念操作式飛翔刃(レイヴン)


 そして、リーンハルトの思念操作により空中に航跡を描きながら、羽根状の刃が戦場を縦横無尽に飛び回る。


『タルワール部隊は下がれ、思念操作式飛翔刃(レイヴン)などシャムシールの装甲ならば恐るるに足らん』


 敵の騎士の指示で、シャムシール部隊はタルワール部隊を囲むように陣形を組んだ。ただでさえ装甲の厚い土属性のシャムシールに、更には属性相性で劣る雲属性のナーゲルリングからの攻撃、それは敵の騎士が言う通り、取るに足らない攻撃――の筈だった。


 しかし、リーンハルトの操作する羽根状の刃は、二騎のシャムシールの装甲に次々と突き刺さり動きを止める。


『なっ、馬鹿な!』


「いくら装甲が厚くたってさ、関節ってのはどうしたって脆いもんなんだよね」


 リーンハルトは、シャムシールの関節部、装甲の特に薄い部分をピンポイントで狙い攻撃しており、それにより属性相性や装甲の厚さを無関係に、攻撃を通らせた。


「あ、ちなみにそれ思念操作式飛翔刃(レイヴン)ってのは嘘だから……ごめんな」


 次の瞬間、リーンハルトが操刃室の中で指を鳴らす。


「爆ぜな、思念操作式飛翔破刃(シグネット)


 すると、シャムシールの関節部に突き刺さった羽根状の刃が爆裂し、シャムシールの四肢や頭部をバラバラにさせた。


『がああああっ!』


 その聖霊騎装の名は思念操作式飛翔破刃(シグネット)。思念操作の特性を持つ雲と、爆裂の特性を持つ炎を模倣させた闇の聖霊の意思を組み合わせた聖霊騎装であり、刃を突き刺した後に爆裂させる事により装甲を内部から破壊する事が出来る。

 

 ナーゲルリングに悉く攻撃を躱され、更には反撃で二騎のシャムシールを撃墜された〈裂砂の爪〉の空翔部隊。するとこの状況に痺れを切らせたのか、敵部隊のシャムシールとタルワールは一斉に肩部を開放させる。そして続けざま放たれたのは追尾式炸裂弾(アーティファクト)であった。


 一騎につき十二発、それが五十騎程の部隊からの一斉攻撃となればその数は計り知れない。


 発射された追尾式炸裂弾(アーティファクト)は、正に雨――否、もはや壁となってリーンハルトのナーゲルリングへと迫り来る。


「やっべ、これ……避ける場所がねえ」


 リーンハルトは、窮地に立たされたと言わんばかりに表情を引きつらせた。


「――なんてね」


 しかし次の瞬間、リーンハルトとナーゲルリングの額に剣の紋章が輝くと、追尾式炸裂弾(アーティファクト)がナーゲルリングをすり抜け、その遥か後方で次々と爆裂した。


「残念だけど、泡沫(うたかた)にはどんな攻撃も無意味なんだよね」


 するとリーンハルトは、敵の射程外で待機させていたパンツァーステッチャー部隊へと指示を出す。


「ほら今チャンスだぜ、やっちゃいな」


 直後、パンツァーステッチャー部隊は刃力核直結式聖霊騎装である狙撃式刃力砲(クスィフ・ペネトレイトカノン)雷電加速式投射砲(レールカノン)を一斉に放つ。


『ぐあああああっ!』


 そして、攻撃直後で結界の展開が遅れるシャムシールとタルワールを、次々と撃墜させていった。



 西方進撃部隊、地上部隊。


「うわあああああああっ!」


 〈裂砂の爪〉の騎士達は、恐怖混じりに刃力弓から光矢を連射させる。自分達に迫り来る脅威、とある一騎の蒼いソードが正に自身達の上位捕食生物に映ったからだ。


 しかし、その蒼いソードは無数の光矢を、斬撃による斬り払いと、盾による防御により、最小限の回避で防ぎつつ間合いを詰めると、擦れ違いざまの斬撃で一騎のタルワールと一騎のシャムシールを斬り裂いて撃墜させた。


「四つ、五つ」


 その蒼いソードとはディオンの駆るジョワユーズであり、ディオンのジョワユーズは更に、別のタルワールに向けて盾の切っ先を向けると、盾の内部から多関節の蛇腹状になった鞭を伸長し、タルワールに巻き付かせた。すると、騎体の関節が凍り付き身動きが封じられる。


 それは敏捷の特性を持つ風と、凍結の特性を持つ水の聖霊の意思を組み合わせ、相手の動きを封じる盾付属型聖霊騎装、氷縛式射出鞭(プレデイトテンンタクル)による効果である。


 ディオンは続けざま、身動きを封じたタルワールを無造作に振り回すと、一騎のシャムシールに叩き付けて激突させた。それにより激突した二騎が互いに地へと平伏す。


 更に、ディオンのジョワユーズはその二騎との間合いを瞬時に殺しており、重なり合うタルワールとシャムシールの腹部をまとめて刃力剣(クスィフ・ブレイド)で串刺した。


「六つ、七つ……ぬるいな、上位騎士師団といえどこの程度か」


 砂塵を舞わせながら爆散する騎体を背に、双眸を輝かせるジョワユーズ。それを見た〈裂砂の爪〉の騎士達は、無意識に騎体を後ずらせていた。


『な、何なんだ! 一体何なんだあいつは!?』


 ソラを含む〈因果の鮮血〉と〈寄集(よせあつめ)隻翼(せきよく)〉の白刃騎士達は、砂漠戦となればそれを得意とするタルワールとシャムシール相手には当然不利になる。その為地上戦といえど、地に足は付けず浮遊しながらの戦闘を行っていたのだった。しかし、ディオンはジョワユーズに、地に足を付かせあえて砂漠戦を選択していた。


 本来ならば〈裂砂の爪〉側にとって有利な砂漠戦。しかし、ディオンはその砂漠戦にて〈裂砂の爪〉の騎士達を圧倒していた。相手の土俵に立ちながら相手を圧倒する、それは圧倒的強者にだけ許された選択肢。


『ああっ、ああああっ!』


 自分達が捕食される立場であると理解した〈裂砂の爪〉の騎士達は、激しい恐怖に顔を歪める。


 しかし、尚もディオンの勢いは止まらない。ジョワユーズは、民家の陰に隠れるタルワールとシャムシールを次々と斬り裂き、撃墜させていく。



 一方、東方進撃部隊、空翔部隊。


 防御力の高いシャムシールが前線に躍り出て、抗刃力結界(イノセントスフィア)を展開して部隊の盾となる、定石とも言える基本戦術を繰り広げていた。


 しかしそこへ、マインゴーシュの凍結式刃力弓(クスィフ・フリーズアロー)による一斉射撃。


 それにより、抗刃力結界(イノセントスフィア)を展開するシャムシールは結界ごと、次々と凍結させられていき、視界と動きの自由を奪われる。


 その隙を突き、シーベットのスクラマサクスが一気に敵部隊の懐へと入ると、シャムシールの展開させる結界に盾の側面を密着させる。次の瞬間、盾の全周に備え付けられている細かな刃が高速で回転し、結界から火花が舞うと同時、光の球体全体に亀裂が走り、粉々に割れて消失した。


 それは盾付属型聖霊騎装の一つ、砕結界式斬廻盾(ディナイアルシールド)による効果であり、シーベットはシャムシールの展開する結界を一つ、また一つと破壊していく。


「シーベットの剣じゃこいつらは倒せない、でも邪魔な結界は壊した……後は頼むぞ狙撃男」



 一方、後方の狙撃点から結界の消失を待っていたフリューゲルは、シャムシールの展開する結界が破壊されたのを確認すると、狙撃式刃力弓(クスィフ・スナイプアロー)による狙撃を二連射させた。それにより放たれた稲妻を纏った光矢が、シャムシールの頭部に寸分違わず二発直撃する。


 そして頭部を貫かれ、操作を失ったシャムシールが空へと落下していった。


「一発で射殺(いころ)せねえんなら、二発ぶち込むまでだ」


 今回エイラリィのカーテナは部隊の最後方にて、戦闘で損傷したマインゴーシュの修復を主にあたっており、連携狙撃が出来ない。その為、フリューゲルは連射による精密狙撃により、不足している火力を補うという技術を披露したのだった。


 それにより、結界を失ったシャムシールが、次々と撃墜されていく。

194話まで読んでいただき本当にありがとうございます。


ブックマークしてくれた方、評価してくれた方、いつもいいねしてくれてる方、本当に本当に救われております。


誤字報告も大変助かります。これからも宜しくお願いします。

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