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174話 狂虎襲来

 そして翼羽、フリューゲル、デゼル、プルーム、エイラリィ、シーベット、カナフの七人は各々が自身のソードに搭乗し、出陣に備える。


 また、翼羽は叢雲の操刃室の中で一人目を瞑っていた。


 ――わしが三殊(さんしゅ)神騎(じんぎ)なんぞより弱いとでも思っておるのか? ……か。また懲りずに大きく出たよね。それでも私は〈寄集(よせあつめ)隻翼(せきよく)〉の団長なんだ。相手が誰であろうと、分の悪い賭けだろうとこんな所で負ける訳にはいかない。


 翼羽は開眼と同時、全騎に向かって檄を飛ばす。


「ここが正念場じゃ、誰一人欠ける事は許さん!」


 直後、格納庫が開放され、空が広がった。


「鳳龍院 翼羽――叢雲、出陣する!」


 ツァリス島に襲来しようとする〈裂砂(れっさ)の爪〉を迎え撃つ為、全騎が出陣した。すると格納庫にはそれを見送ったソラがそこに居た。


 そしておもむろにカレトヴルッフの操刃室に入り、操刃柄(そうじんづか)越しに自身の刃力を聖霊石に注入する。しかし、カレトヴルッフの動力が起動する事は無かった。


「くそ……やっぱり駄目か」


 ソラの両手が握っていた操刃柄から力無く零れ落ちた。





 翼羽の指示で、〈寄集(よせあつめ)隻翼(せきよく)〉の騎士達は既に配置に付いていた。


 ツァリス島に配置されているのはフリューゲル、デゼル、エイラリィ、カナフの四人。デゼルはパルナと翅音(しおん)のいる島中央聖堂付近に位置し、聖堂の守護と、他の騎士の援護を行う。


 カナフは島の北側に位置し、狙撃により敵の撃破と味方の援護、フリューゲルとエイラリィは島の東側に位置し、火力を高めた連携狙撃により敵の撃破と味方の援護を行う。


 翼羽は島の北東側上空、最前線の位置で敵を中央突破し敵の撃破及び敵将であるシェール騎の撃破を目指す。シーベットもまた島の北東側上空、やや翼羽の後方に位置し、翼羽の討ち漏らしを撃破する。


 すると、翼羽がシーベットへ個別に伝声を行った。


「シーベット、以前お主は神鷹(じんおう)とオルタナに明らかに標的にされていた。今回もそうならんとも限らん、決して警戒を怠るな」


『了解だよだんちょー』


 そしてプルームは島の東側上空に位置し、中距離戦にて敵の撃破及び翼羽とシーベットを援護する。


 各々が各々の配置にて敵を待ち構えながら、緊張に冷たい汗を流したその時。フリューゲルは竜殲術〈天眼(てんみとおすまなこ)〉により、敵をその視界に捉えた。


 フリューゲルのパンツァーステッチャーが背面に収納された狙撃式刃力砲(クスィフ・ペネトレイトカノン)の砲身を展開し、長距離から金色の騎装衣を形成させるソードに狙いを定めた。


 そのソードはディナイン群島産である事を示す兜飾り(クレスト)として宝玉を額に埋め込んでおり、黄を基調とした重装甲のソード。フリューゲルが初めて見る騎体であった。


「開戦の狼煙じゃ、行けフリューゲル、エイラリィ!」


 直後、翼羽の合図でとある目標へと引き金を引き、パンツァーステッチャーが構えていた狙撃式刃力砲(クスィフ・ペネトレイトカノン)を発射。放たれた稲妻を纏った光の矢は、空中に浮遊する円状の門、エイラリィが操るカーテナの浮遊式刃力増幅門(エンハンスゲート)を通り、更に強大で鋭い矢となって金色の騎装衣を形成させるソードへと飛来した。


 次の瞬間、金色の騎装衣を形成させたソードは騎体を急上昇させて稲妻の矢を回避する。しかし、その矢は銀色の騎装衣を形成させる別のソード三騎をまとめて貫き撃墜させた。


 すると金色の騎装衣を形成させるソードの操刃者――シェールから〈寄集(よせあつめ)隻翼(せきよく)〉側のソード全騎に向けて伝声が入る。


『超長距離狙撃なんて、いきなり酷い挨拶するなあ。新型量産剣シャムシールがさっそく三騎も墜とされちゃったよ』


 対し、伝声を返す翼羽。


「お前が〈裂砂(れっさ)の爪〉師団長、狂騎士シェール=ガルティか。こないだはうちの騎士達が随分と世話になったようじゃな」


『ああ、あなたが例の〈寄集(よせあつめ)隻翼(せきよく)〉の団長さんだね? あはあ、こんなに可愛らしい蛆虫だったなんて知らなかったよ』


「……神剣アパラージタはどうした?」


『いやあ、自国領土の防衛以外で神剣を使用する場合は、アークトゥルス陛下と同等の決定権を持つレオの了承を得る必要があってね、面倒だしどうせ簡単に許可も降りないだろうから今回は新型量産剣のテストも兼ねてこのシャムシールで来たってわけ』


「随分と舐めてくれるのう」


 次の瞬間、シェールは口の端を上げた。


『そっちこそ、このシャムシールを舐めてもらっちゃ困るなあ』


 そして、およそ半数のシャムシールが抗刃力結界(イノセントスフィア)を発動させ、半透明の白く発光する球体に包まれると、前線に躍り出てそまま全速で突撃を開始した。


「来るぞ、迎え撃てフリューゲル、カナフ!」


 翼羽の指示で、狙撃を開始するフリューゲルのパンツァーステッチャーと、カナフのタルワール。


 フリューゲルのパンツァーステッチャーは浮遊式刃力増幅門(エンハンスゲート)で威力を増幅させた狙撃式刃力弓(クスィフ・スナイプアロー)による稲妻の矢で、カナフのタルワールは消耗が激しいとはいえ狙撃式刃力砲(クスィフ・ペネトレイトカノン)を使用した稲妻の矢で、抗刃力結界(イノセントスフィア)を発動させたシャムシールの撃破を目論む。


 しかし、両者の攻撃はそれぞれ二騎のシャムシールの結界を貫く事は出来たものの、それだけに留まり本体に攻撃は届いてはいなかった。


『装甲が厚い、かなり防御力に長けたソードのようだ』


『ちっ、ならよ!』


 刃力核直結式聖霊騎装ですら決定打にならない新型量産剣シャムシールの装甲を目の当たりにし、フリューゲルはパンツァーステッチャーの腰部に接続され背面に収納されていた砲身を展開させ、浮遊式刃力増幅門(エンハンスゲート)により威力を増幅させた狙撃式刃力砲(クスィフ・ペネトレイトカノン)での狙撃を試みる。


 それにより、鋭く巨大になった稲妻の矢が一騎のシャムシールを、抗刃力結界(イノセントスフィア)ごと貫いて撃墜させた。そして更に連発、稲妻の矢がもう一騎のシャムシールを貫き撃墜させる。


 しかしそれは、フリューゲルにとっては想定外の事態であった。


 エイラリィのカーテナとの連携により威力を増幅させ、刃力核共鳴式聖霊騎装に近い威力を持たせた一撃。初撃では一度に三騎のシャムシールを貫く事が出来たのだが、狙撃を警戒して重ならないように位置を取るシャムシールに対しては、連携攻撃を二発撃っても二騎しか撃墜に至らなかったからだ。


 フリューゲルは既に刃力を大幅に消耗する刃力核直結式聖霊騎装を三発使用している。しかしそれでも撃墜数は未だ五。敵の数を大幅に削るには至らず、敵部隊の接近を許していた。


 次の瞬間、前線で盾の役割を行っていたシャムシールが左右に分かれ、一騎のシャムシールに道を開けた。


 そのシャムシールの騎装衣は金色、シェールの駆るそれは、腰部に接続され背面に収納されていた砲身を左右両方展開しており、そこに強大な光が収束されていた。


『汚い汁ぶちまけながら即死しなよ、蛆虫共』


 それは刃力核共鳴式聖霊術法と呼ばれる攻撃方法。左右の腰部に同種の刃力核直結式聖霊騎装を装備させ、同時に起動させる事で双方の聖霊石を共鳴させ、刃力核直結式聖霊騎装よりも更に強力な一撃を放つ。


 波動の特性を持つ光と、分裂の特性を持つ土の特性を組み合わせた散開式刃力砲(クスィフ・ディスパーションカノン)を左右同時に放つ共鳴散開式刃力砲(クスィフ・ケイオスヴェイン)による一撃だった。


 そこから放たれる強力な攻撃を察知し、翼羽が咄嗟に全騎に指示を出す。


「シーベット、プルームは自力で回避しろ! デゼルは、それ以外の者達と聖堂を死守!」


 直後放たれる砲撃、嵐の如く降り注ぐ無数の光矢を、翼羽、シーベット、プルームは騎体を左右に振らせ回避行動を取らせながら、潜り抜けていく。


『敵の騎体属性もこの攻撃も土属性、一撃でも直撃すれば終わりだぞシーベット』


『任せろシバさん、シーベットは避けるのは得意なんだ』


『こ、こんなの反則だよお』


 とはいえ、命中率の高い拡散攻撃。それら全てを完全回避するのは至難の業であり、致命傷には至らないもののシーベットのスクラマサクス、プルームのカットラスは鎧装甲を削られていた。


 降り注いだ光矢の雨がツァリス島を貫いていく。

『防ぎきってみせる!』


 するとデゼルは竜殲術〈守盾(まもりのたて)〉を発動させ、フリューゲルのパンツァーステッチャー、エイラリィのカーテナ、カナフのタルワール、そして自身のベリサルダと聖堂の前に光の盾を出現させ、共鳴散開式刃力砲(クスィフ・ケイオスヴェイン)による光矢の雨を防ぎきる。


 そして翼羽は既に竜域に入り、それらの攻撃を完全に回避しきる事に成功していた。

174話まで読んでいただき本当にありがとうございます。


ブックマークしてくれた方、評価してくれた方、いつもいいねしてくれてる方、本当に本当に救われております。


誤字報告も大変助かります。これからも宜しくお願いします。

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