第3話 出会い
いざ休日になり、休もうとしたが、やることが無くて暇だった。本当に勉強以外には何もしてなかったのだと気付いてしまった。どうすればいいかわからなくて困っていたら、僕の部屋に来た親が提案してくれた。
「外で散歩でもしたら?あなた、学校に行くこと以外でまともに外出していないでしょ」
言われてみればそうだ。とりあえず、外に出て日の光を浴びよう。
いざ外出すると、日の光にやられてしまいそうだった。吸血鬼のような発言をしてしまったが、インドアな人間であるがゆえに、外の眩しさには弱いのである。お出かけをするときはサングラスが欲しいと思っていたら、例の眠り姫と出会った。
「あれ?クラスメートくん?」
「あら、奇遇だね」
このような展開になったはいいが、特に話すこともないのだ。挨拶を済ませて、そのまま別れると思っていたが、どうやらそうでもないようだ。
「せっかくだし、ちょっと話さない?」
え?これから彼女はどうしたいのであろうか。僕なんかが知る由もなかった。
眠り姫と一緒に行動することになったが、どんなお話をすればいいのだろうか。そう思っていたら、彼女のほうから話しかけてくれた。
「そういえば君、今日は休養をとる日なの?なんか、いつも勉強しているイメージがあるからね。そう思っちゃった」
「そうだね」
「やっぱりね。私?久しぶりに気持ちよく起きれたから外に出たわけよ」
なんか、普段寝てばかりいるような人が外出していることも、誰かとお話ししていることも珍しい光景である。次にこれを見れるのはだいぶ先のことだろう。
彼女は何かに気づいたのか、僕に聞きたいことがあるようだ。
「まだ名前を聞いてなかったよね?誰だっけ?」
よく考えたら、自己紹介すらしていなかった。
「僕の名前は柊一紫。よろしく」
「自己紹介ありがとう。私は秋葉緋愛。よろしくね」
自己紹介も終えて、秋葉さんと散歩しながら駄弁っていたら、今度は僕のほうが気になることがあったので、彼女に聞いてみることにした。
「秋葉さんに聞きたい事があるんだけど、学校に掲示されていたことから君が学年1位であることを知っているけど、普段どのように勉強をしているか教えてくれるかな?」
実は隠れて勉強しているといったオチがあるのかと思ったが、彼女の答えは違った。
「私?教科書を1回読めばだいたいわかるよ」
なるほど、いわゆる天才型ですか。ここで分かったことは、僕には真似のできないことである。彼女は続けて話した。
「なんか、特別な教育を親から受けたわけではないけど、教科書を見れば理解できてしまうせいで、授業を受ける意味が分からなくなってしまうのよね。数十分も先生の話を聞くことが苦痛になってきて、授業中に眠ってしまうようになったわけよ」
そのようなエピソードがあったのか。僕の場合、授業をしっかりと聞き、復習もしっかりとすることでようやく理解できるので、彼女と僕は真逆のタイプなのだろう。
「君の場合、誰よりも勤勉なイメージがあるから、そのうち私よりも良い順位を取るかもね」
彼女にこう言われてしまったら、言うことは決まっている。
「実は、僕はこの前のテストでは学年2位だったよ。次はトップを取るつもりだから、そのつもりでいてね」
よし、勉強のモチベーションは変わらないが、良きライバルができたという意味では、気持ちは前向きになっただろう。
「そうか、なら私も本気を出すよ」
どうやら、気持ちに彼女にも火がついたようだ。いわゆる天才児が真面目に勉強するようになるとどうなるかわからないが、それでも僕は負けるつもりはない。僕をこのような気持ちにさせたということでは、彼女に会ったのは良い機会であったと言えるであろう。