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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第1章 ユタ・ビーチ
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6月6日 午前2時 サン・メール・エグリーズ

 断続的に機銃音が轟く。明かりを背にして立っている者は、敵からも味方からも狙われた。月明かりに浮かび上がるパラシュートはどれも、降下するまでに無数の裂け目をつくった。第82空挺師団の一部が、ドイツ第91歩兵師団のある連隊の駐屯する村の真上に降下してしまったのである。シャツのままモーゼル銃を構える兵士がそこかしこに見られた。


 アメリカ第82空挺師団はこの日、徹底的な不運に見舞われていた。降下地点がずれた上に兵士の散開も予想を越え、しかも最悪なことにせっかくグライダーで運んだ軽砲はほとんどメルデレ川周辺の湿地帯に吸い込まれてしまった。


 コンラッド中尉はしこたまサブマシンガンの弾薬を抱えて降下したのだが、あらかた弾薬を使ってしまって、戦死者から分捕ったライフルで戦っていた。正面からの射ち合いになると、軽装備でばらばらに降下した側は分が悪い。


 この街は小さいが最重要目標の一つであった。カランタンからシェルブールへ伸びるN13道路はこの小さな街を通っているし、コタンタン半島を横断する2本の主要な道路のうち1本がここから分岐している。


 8発入りのクリップがまたライフルから飛び出してきた。弾を詰め直すコンラッド。ドイツの機関銃は鋸を引くような、やたら甲高い音を立てる。ドイツの戦力は正確には分からないが、間に合わせの小集団を組んで戦っている連合軍の不利は明らかであった。このまま全部隊がこの街に吸い込まれて全滅するのではないか。海岸へ向けて血路を開くべき頃合を、すべての将校は心の内で測っていた。


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