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6月6日 午前1時50分 カランタン市
「B軍集団から警報が出た。北フランス各地に空挺降下があった」
SS第12戦車師団長・ヴィット准将は、戦車連隊長マイヤー准将に短く告げた。すでに師団司令部には、海岸近く、サン・マリー・デュ・モン村の丘に進出していた偵察大隊から生の警報が届いていて、15分ほど前から主だった将校は司令部に集まっていた。
「命令は?」
「まだない」
「上陸はないのか」
「シュパイデルは何も言わなかった」
上陸は夜明け前後に行われるのであろう。上陸側が日中をフルに使って広い地域を確保しようとするのは常識的な行動であった。
マイヤーは短く言った。
「海岸への道路は、直ちに確保する必要がある。空挺部隊が再集結する前に」
「そうだな。全師団、出動準備」
ヴィットも短く応じた。周囲が急に慌ただしくなった。カランタンの町全体が戦車とハーフトラックのエンジン音で満たされようとしていた。