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6月6日 午前3時 ランヴィル村(ソード・ビーチ内陸)
オルヌ川の河口にあるウィストラムの町からカーン市までざっと10キロ。その間に道路橋は1本しかない。ウィストラムとカーンのちょうど中間にあるこの橋は、東岸にランヴィル、西岸にベヌーヴィルというふたつの村を結んでいる。この橋を確保しなければ、連合軍はカーン市の東側を遮断するすべを失うので、攻略が困難になる。カーン市はこのあたりでは群を抜く中核都市で、それだけ交通も集中しているのである。
イギリス第6空挺師団の先遣隊はこの橋の両端を難なく奪取したが、さっきから不気味な多数のキャタピラ音に脅かされている。事前の情報によると、この近くにはドイツの戦車師団がいるはずであった。早すぎる。グライダー部隊の主力はまだ到着していないのだ。付近が主力部隊のグライダー降下地点に指定されている、ランヴィルの村から断続的な機関銃音が聞こえる。イギリス兵士たちは唇を噛む。
兵士たちは天を仰いだ。空軍と上陸部隊を運んで来てくれる太陽は、まだ見えない。指揮官たちは、言葉少なに軽機関銃と対戦車兵器の配置を指示し始めた。