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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第2章 オマハ・ビーチ
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6月6日 午前6時 フォルミニ村(オマハ・ビーチ内陸部)


 雨に打たれた潅木群はあれだけの爆撃にも長く火勢を保たず、あちらこちらから立ち上る煙だけが破壊の後をとどめている。レント中佐は、忙しく被害報告をメモにまとめていた。


 レント中佐は、バイエルライン中将の戦車教導師団から第352歩兵師団の支援のために分遣された戦闘団を預かっている。この戦闘団は偵察大隊と対戦車大隊、そして無線操縦戦車中隊から成っていて、30両ほどの突撃砲と、6両の重戦車を含んでいた。無線操縦戦車は、無線操縦でじりじりと敵陣地に近づき、爆薬を落として後退する特殊な小型無人戦車である。


 突撃砲というのは、ドイツの発明品である。戦車に砲塔をつけないで、上下には動くが左右にはほとんど動かないように、大砲を支える軸を車体に固定してしまう。こうすると砲塔を回転させるための複雑な機構が要らないし、車内が広く使えるから小さな車体に大きな大砲が積める。ドイツは戦争後半になると、旧式戦車の生産ラインを半分流用して、この種の突撃砲をさかんに生産した。


 30両の突撃砲のうち、10両が爆撃で失われてしまった。どうやら連合軍は海岸の陣地を爆撃しようとして、投弾のタイミングを遅らせてしまったものらしい。レントは首を振った。昨夜の師団司令部の警報-いったいどのレベルから降りてきたものか、レントには見当もつかない-と考え合わせると、休暇は終わったと考えるしかないようだった。


 とにかく海岸へ出なければならないらしい。レントは偵察大隊長に伝令を走らせた。兵員輸送車は被害がまちまちだから、この場でカムフラージュを施して無理に海岸へ出さないこと。なにしろ海岸までは5キロほどしかないのである。5キロも歩かなくても敵に遭えるのではないか。海岸からは不吉な砲声が韻々と轟き続けている。


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