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7月11日 午前10時半 ベルヒデスガーテン(ヒトラーの別荘)
「カバンをお預かりしましょうか」
「いや、結構」
OKWの若い中佐が、来客を出迎える。
シュタウフェンベルク大佐はソビエト軍の地雷のために、右手をなくしていた。左手に残った3本の指が、いまドイツの運命をわしづかみにしている。
彼の公職は、予備軍参謀長であった。東部戦線も西部戦線も、国内で訓練中の兵員を緊急に、大量に必要としていたので、ヒトラーは彼に現況の報告を求めたのである。
「今日の会議には、ヒムラー長官はおいでにならないのですか」
「他用がおありで」
シュタウフェンベルクはひそかに失望した。兵権を握っているヒトラー、ゲーリング、ヒムラーの3人がいるところで、カバンの中の爆弾を使いたかったのである。
しかしロンメルも先走ったことを何かやったらしいし、先に延ばせば露見の恐れがあった。2人を倒せれば、よしとしなければなるまい。




