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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第2章 オマハ・ビーチ
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学生と教授の会話 #3


 教授も、やりとりに息詰まるものを感じたようであった。話題はオマハ・ビーチへと転じられた。


「オマハ・ビーチとはどういう所だったかな」


「ヴィール川を隔ててユタ・ビーチの東です。ジェロウ中将のアメリカ第5軍団が受け持ちで、初日には第1歩兵師団と第29歩兵師団が上陸しました」


 学生の答えは淀みない。


「連合軍はここで困難にぶつかったのだね。ではそうなった原因を挙げられるかな」


 教授は静かに難問を提示した。


「ええと、まずここを守っているドイツ第352師団は、連合軍の推定位置が間違っていて、海岸にはいないと思われていました。この海岸の砲台を爆撃するのに空軍が位置をまちがえて、無傷の大砲が多く残ってしまいました。あと、海が荒れていて、水陸両用戦車がたくさん海に沈んでしまいました」


 教授は微笑んだ。


「よく調べている。あえて言えば……」


 教授は学生が持参した地図の上に骨ばった指を伸ばした。地形図ではなく、歴史の教材に使うような地図で、道路、都市、上陸地点と部隊配置が示されている。


「ここと、ここは、なぜ抜けているのかな」


 ユタ・ビーチとの間、そしてゴールド・ビーチとの間には、それぞれ10km以上の間隙がある。


 学生は教授が考えていたより利発で、与えられた情報をすぐに整理していた。


「さっき先生が仰ったように、抜けているところは砂浜じゃなかったんですね」


 教授は満足げに頷いた。


「そうだ。そして他の上陸地点に比べると、この砂浜は奥行きがない。沖に出るとすぐ深くなる。水陸両用戦車が沈みやすかったのはひとつにはそのせいだろう」


 学生は懸命にメモを取る。


「守る側としては、ここはヤマを張りやすいところだな。両側にはわずかな戦力を置いただけで、主力はこの海岸で待っていればいい」


「そんなところへ、なぜ連合軍は上陸したんでしょう」


「いい質問だ。たぶん上陸したくなかったろうな」


 教授の指が再び地図に伸びる。


「しかしそうすると、ユタ・ビーチとゴールド・ビーチが分断されて、ひとつずつつぶされてしまう」


 教授は何気なく話題を変える。


「ドイツ軍には、直前になって増強された部隊があったね?」


「高射砲連隊がひとつと、戦車教導師団の一部です」


 学生はそういうことはよく調べているようであった。


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