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狐の住む岸辺  作者: マイソフ
第1章 ユタ・ビーチ
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学生と教授の会話 #1



「ノルマンディの話を聞きたいのだったら、まずノルマンディについて知っていることを話してごらん」


 教授は、女子学生を促した。


「それで私の話はずいぶん短くなるし、きみも本当に聞きたいことを質問する時間が取れる」


 学生は一生懸命予習してきたことを、すこしずつ思い出しながら話した。


「はい。連合軍は5つの上陸地点に分かれて、フランス北部のドイツ軍に攻め掛かりました。西から順に、ユタ、オマハ、ゴールド、ジュノー、ソードです」


「5つの地点の幅はどのくらいだね」


 口ごもる学生。教授は知らなくてさも当然、と自分で質問を流してしまう。


「70キロほどだね。では空挺降下について話してごらん」


「両端のユタ・ビーチとソード・ビーチの内陸部に、あわせて3個師団が降下しました。5つの上陸地点には初日に合わせて6個師団が上陸しています」


 答えられる質問で学生はほっとしている。


「空挺師団の役目は、上陸部隊が十分な広さの地域を占領するまで、ドイツ軍の反撃を遅らせることです」


「では、連合軍はなぜそれだけ広い幅に散らばったのかな」


「えーと、それは、ドイツ軍に一気に打撃を与えるためで……」


 教授は、座り直した。


「君は、ノルマンディの地図を見たことがないね」


「えーと、あのー、はい」


「70キロのどこにでも砂浜があるわけではないんだよ。人にとっては岸壁をよじ登ることは不可能ではないが、補給トラックも戦車も通れないのでは上陸は無意味だ」


「はい」


「車の上がれる砂浜を5個師団分切れ切れに探したら、70キロに広がってしまったと言うわけだ。その幅の中で、上陸できる砂浜はほとんど全部使われているのだよ。ユタ・ビーチについて、どんなことを知っているかな」


「はい。ユタ・ビーチはコタンタン半島の付け根の東側です。ここを担当したのはアメリカ第4歩兵師団、そして内陸に降下したのはアメリカ第82と第101空挺師団です。ドイツ軍は海岸に第709歩兵師団、半島の真ん中に第91歩兵師団、半島の付け根に第12SS戦車師団がいました」


「直前になって、ドイツの防衛が強化されたはずだね」


「第12SS戦車師団は、上陸の前の月に半島の付根のカランタン市に移ってきました」


「よろしい。私の話は短く済みそうだ。ここに上陸した連合軍の狙いは何だった」


「コタンタン半島の先にあるシェルブールの港湾施設です」


 学生の返答は今までで一番速い。


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